西陣にまつわる
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西陣にまつわる人々が、綴るコラムCOLUMN

2022.03.15
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リレーコラムを書かせていただいて、早くも一年が経とうとしています。 季節も巡り、日差しにもずいぶん暖かさを感じる頃合いとなってきました。 近所を散歩していたら、同志社大学の前に八重咲きの梅を見かけました。一瞬桜かと思うほど淡く美しい桃色に、これから来る春を思っては心が浮き立つような気分に。 春を迎え、夏が来て、秋が過ぎ、冬を越えて、また新しい春が来る。 幾多のその日その瞬間を重ねての今日、今現在があるのですが、過ぎ去った時間というのは振り返るとあまりにもあっという間でいつも驚くのです。 一年の振り返りを思うのは、新年よりも、いつも春の直前のこの頃です。 人生の残り時間を秒数や日数で考えるよりも、 「あと何回春を迎えられるのか」と考える方が非常に心に刺さるのはやはり日本人ならではかと。 四季の巡りは繰り返しではなく、変化を続ける途上。 これからの春は、そしてこの春の先は、どんな景色が待っているのでしょうか。 一歩一歩、また新しい一日を迎え、積み重なり新しい景色が広がっていく。 人生とはなんとも味わい深いものかと、春を前にふと、とりとめもなく。

松波さゆり

和裁士 松波さゆり

岡山県出身。布好きが高じて京都で学び暮らし始めて早18年目。プロの和裁士としてテレビドラマの衣装をはじめ様々な仕立てを手掛ける。現在は市民運営の寺院 ”寳幢寺”のスタッフとして日々を過ごしながら、社会や地域に貢献できることを模索しています。

2022.03.13
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去年、2021年は3月半ばで京都の観測史上最速の桜の開花のニュースが聞こえた。ネットであやふやに見かけた「一条戻橋の桜はもう散り始めているらしい」との情報で、3月末の夕刻になって慌てて向かった。一条戻橋は、文章博士・三好清行の葬列がこの橋を通っているときに、死の知らせに駆けつけた息子・浄蔵がどうか戻ってきて欲しいと誠意を込めて祈願し、父親が一時蘇生して父子の交流を温めた伝説から「戻橋」の名前になった謂れがある。桜はその儚さから死と結びついたイメージがあり、京都で眺める桜は幽玄さを感じる。まして死者が蘇る伝説がある一条戻橋の桜!と想像を膨らませていったら、儚さの象徴ともいえる薄いピンクが舞い散るソメイヨシノではなくピンクの色が濃い別の種類だったようだ。だがイメージと違ってがっかりということもない。周辺住民の憩いの場、堀川の清流をゆっくり散策する人たちの目を楽しませ春の到来を告げていた。
そのまま一条戻り橋ともゆかり深い安倍晴明を祭神とする清明神社に立ち寄る。非接触型電子おみくじで出た番号のくじをひく。29番中吉。今年こそ良いタイミングで桜を眺めたい。まもなく京都で迎える三度目の春だ。

川原さえこ

もう一つの椅子 川原さえこ

京都府長岡京市在住。フリーランスのリサーチャー、保育士。「もう一つの椅子」という名義でまちのランドスケープ(風景)研究を行う。東京下町から京都へ来て約1年。観光客でもなく京都の地元民でもない境界の視点でふらりと歩いたまちの景色を描く。

2022.03.12
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西陣に来た頃から、とある仕事に手を染めている。
壁画制作、つまり店舗や公共の建物の壁に描かれている「絵」の制作をする仕事である。

僕と同じタイミングでこちらに工房を移したというボスとヘルメットを被り、建設現場に絵を描きに行くのだ。
現場の職人さんたちもこういう職業は見たことがないらしく、打ち合わせなどでも呼び方が分からず「絵描き屋さん」とかと呼ばれたりする。

この仕事では原画があり、デザイナーもいてその上で描く事をする仕事である。それまで自分だけの絵を描いていた僕は、仕事として絵を描く事がどういう事かを厳しく言われ最初は少しショックを受けていた。
だが納期前の徹夜続きの中、クォリティを上げるためになお細かい修正を繰り返すボスに絵描きの気持ちを見た気がする。それが全体を変えるのだ。

気持ちの入っていない絵は見たらすぐにわかってしまう。
壁画の仕事はアートや芸術の世界で語られるものではないかもしれないが、描く手にはそれぞれの感性があるのだ。

景井雅樹

版画家 景井雅樹

京都の版画工房で銅版画を始める。 2006年頃より、毎日の出来事をノートに青いボールペンで描く絵日記形式の作品を作り始める。 一日1ページで現在4000ページほど。まだ毎日描いている。 コーヒーと自転車と音楽の愛好家。

2022.03.11
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多拠点生活サービス「ADDress」のまっさんこと高本です。

西陣の範囲には諸説あるも南が中立売通より広めの丸太町通の場合(確か京都市の西陣活性化MAPではそうなっていた)、僕にとっての思い出深い西陣の聖地は室町通丸太町上るにある「風伝館」(アミタミュージアム)である。

今から3年前、スピンズで有名なヒューマンフォーラム岩﨑社長から紹介されて、アミタ会長熊野英介塾長が「心をつくる産業=Mindustry」 を創造し、京都から世界を変えるイノベータ育成する「A-KIND(あかいんど)塾」に通うことになったのだった。学ぶ内容は今までの活動領域(アドレスやソーシャルイノベーション研究所など)からもデジャヴで共感120%、最終課題の平安神宮模擬店出展では苦闘しながらも最低限の形にしたつもりだった。が、熊野さんからは君は全く分かっておらん!と叱咤され、悔しくて卒塾式の日にオッサンながら泣きながら丸太町通から京都駅まで歩いて帰ったことを忘れもしない笑

あれから3年経った。あの時熊野さんが言いたかったことを全国を奔走しながら噛み締めて活動している自分がいる。表向きだけ飾ったものは弱い。他人事ではなく自分事で真剣に吟味しお客様を幸せにするものを創り出せ。風伝館で学んだ大切な事と大切な仲間が今の僕のエンジンになっている。西陣よ、僕の人生を変えてくれてありがとう。熊野先生、叱っていただきありがとうございます。

高本昌宏

多拠点プランナー / ADDress 事業企画 高本昌宏

学生時代に伏見と西陣に住んだことがきっかけで、京都では決してメインストリームではないかもしれないこの二地域に惹かれる。多拠点居住サービス立ち上げをしながら、2020年伏見移住。西陣にも同年から通い始め、魅力再発見中。

2022.03.10
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3月に入り、日中は暖かな春の陽気を感じる日も出てきました。
子どもたちも学年末、春休みももうすぐそこまで近づいてきています。

子どもたちの関心の中には、すでに新しい学年になってからのこともあるようで、
特に今の1年生は、新しい1年生を仲間に迎えることに内心ドキドキしているようです。
西陣のまちの中でも、小学校へ通う練習をしているのかなぁと思われる親子の姿をお見かけします。そうした様子を眺めながら、新しい年度を間近に控え、私たちも少し気持ちがソワソワする今日この頃です。

さて、昨年11月に、まちのフィールドを活用し、様々な地域の店舗様にご協力いただいて実施した「なぞときまちさんぽ」ですが、この春(予定では5月)、マチゴトアフタースクールプロジェクトとして、第2弾を実施することになりました。今回はさらに多くのメンバーの皆さまと共に、よりおもしろいイベントとなるよう企画を進めています。このまちが、子どもたちにとって、子育て世帯にとって、そして多様な多世代にとって、さらにおもしろいことに溢れた「まち」となるよう、微力ながら全力で取り組んでいきたいと思います。

村上弘

特定非営利活動法人 代表 村上弘

特定非営利活動法人SOWERS代表 放課後の時間に、多様な体験を届けるafter schoolミライブラリを運営。子どもたちの今とこれからを考え、放課後の選択肢とその可能性の拡張を目指し、日々活動しています。

2022.03.09
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子供の頃は団地に住んでいて団地の中が遊び場だった。塀や物置きなど登れるところはどこにでも登り、そこから団地の外や隣接する塀の上を伝って近所にワープするルートを知りつくしていた。かくれんぼや缶蹴り、ドロケイに明け暮れる日常で自然と身についていた。新しいルートや隠れるスペースを見つけるとすごくワクワクしたのを覚えている。

今住んでいる西陣界隈の住宅地には自転車も通れないような小道がちょこちょことあって散歩で見つけると探索してみる。敢え無く行き止まってしまう事もあるが、思わぬところにつながっていたりする。新たなルートを発見すると小躍りしたくなるような快感がある。子供の時からその感覚は変わってないのだ。

小川 櫻時

映像監督 小川 櫻時

長年様々な映像をを作る仕事をしています。東京、沖縄を経て2015年から京都市在住。近年は、クラフト作家や様々な手仕事をする人々にフォーカスした映像を制作・発表しています。映像空間演出ユニット「SAKKAKU」としても活動しています。

2022.03.08
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何度も雪が降り厳しい寒さが続いた冬もそろそろ終わり。
春の訪れを感じる温かい日も増えてきました。
と同時に、新生活の準備を始める方も増えてきました。先日もお客さんで「名古屋への引っ越しが決まりました」「就職で東京に向かいます」なんて声も聞きました。

実は、卒業や就職・引っ越しなどライフステージが変わってもまた京都に立ち寄った際にふらっと来てもらえるそんなお店になれば良いなぁというのがオープンするときの隠れた野望でした。

だからこそ、もちろん寂しい気持ちで一杯ですが、ただ商品をやり取りするだけでなくささやかながら個人的なお話を出来る事にとても幸せを感じます。

コロナ禍で様々なコミュニティの希薄化が叫ばれる中で、誰かにとっての「帰って来れる場所」でありたいなぁと思うし、自分自身もいつか西陣を離れる日が来たとしても「帰って来れる場所」と言えるようにもっともっと西陣の事を知りたいと改めて感じる日々です。

三輪浩朔

Laughterロースター 三輪浩朔

2020年10月「Laughter」を開業。21歳までコーヒーを飲んだことがなかったが、タイ北部の農園に直接足を運んだことでその魅力にほれ込む。コーヒーを通じて生産者の思いやストーリーも届け、一杯から笑顔溢れる空間を紡ぐことを目指している。

2022.03.06
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あっという間に今年も3月。

北野天満宮では梅が咲き始め、そろそろメジロも戻って来始める初春。とは言えまだまだ朝夜は寒く油断していると風邪を引きそうな温度差で、早く暖かくならないかなぁと願ってやまない今日この頃です。

さて今年に入ってから長らくお休みしていたフォトウォーク、というかタダのお散歩カメラとvlogを再開しているのですが、ここ2年ほどあまり街をウロウロしていなかったせいか、色々なところにお店が出来ていたり、はたまた町家がなくなって空き地になっていて寂しくなったりと西陣の変化をリアルに感じつつ、写真や映像に収めています。

今年1年は西陣界隈の雰囲気をアーカイブしつつ、色々な動きに繋げていければ。季節を楽しみつつ、のほほんと春を待つこととします。

ミツギタカユキ

デザインカタリスト ミツギタカユキ

20歳より渡米し、大学にて彫刻からインタラクティブアート、デザインなど幅広い分野を学びつつフリーのデザイナーとして活動。帰国後京都に移住。現在西陣にてデザインカタリストとしてウェブ制作からデザインに纏る企画・運営など幅広い分野で活動を行う。

2022.03.05
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先日、近所を散歩していたら、いつもよく通る道で違和感のある風景が目に止まった。
「こんなところから空見えたかな?」
北野商店街の見覚えのある風景ではなく、自分の知らない町に訪れた感覚がする。この場所はガレージではなく、何か家が立ち並んでいたように思うのだが、こんな時、記憶は曖昧なもので、意識して見ていないから何があったのか全く覚えていない。脳を絞り出して、いくら思い出そうとしても、空を覆い隠す建物の輪郭ぐらいしか思い出せない。中信(京都中央信用金庫)の壁には失われた脳の記憶の残像がうっすら浮かび上がっていた。

亀村佳宏

映像ディレクター 亀村佳宏

1978年に京都市(北区平野)で生まれ育ち、2002年、上京ののち、PV、スポット CM 制作を経て、撮影技術やコンポジット編集技術を習得。2009年に京都に拠点を戻してから、個人事務所で映像や写真の仕事をしております。趣味:卓球

2022.03.02
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「コロナ陽性者が出て保育園が休園になった」
「小学校でリモート授業が始まった」

第6波が来たと言われてしばらく、こんな事態になっています。
普段行く場所をなくした子どもたちがどこに「いる」のか、私は想像できていませんでした。

2月上旬のある日、お昼どきを過ぎた頃にバザールカフェに寄ると、庭で4,5人の子どもたちが走り回っていました。そこに親御さんの姿はほぼなし。バザールカフェのスタッフやボランティアやお客さんが、子どもたちと一緒に遊んでいるのです。

カフェなので、子どもさんと遊べる態勢でないときが勿論あります。
まったく知らないお子さんが1人で訪れるということも、これまではなかったように思います。

ただ、子どもが今そこに「いる」ということを、空間や、居合わせた人が無条件に受け入れている。
そしてそれぞれが無理のない距離感で、そのときをなんとなく楽しんでいる。
そんなように私は感じました。

「お子さんと一緒に遊びます!ぜひおいでください!」と大手を振っては言えませんが、お子さんも親御さんも「いる」ことができる場所のひとつとして、バザールカフェを思い出していただけると幸いです。

狭間明日実

バザールカフェ店員 狭間明日実

バザールカフェ事務局6年目。日々の営みをとおして、場から起こるもの、個人がのびのびと生きることなどを考えています。 傍らで、地域、福祉、食べることにまつわるいろんな仕事や遊びをしています。 同志社大学社会福祉学科卒業。社会福祉士。海が好き。