西陣にまつわる
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西陣にまつわる人々が、綴るコラムCOLUMN

2021.12.03
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七本松通に52系統の市バスが復活しています。七本松通を中心とした地域の高齢者が公共交通機関を利用しにくい…という要望で復活したそうです。結構狭い七本松通を走るバスは、小さめの車体での運用とはいえなかなかのボリュームです。

もともと52系統は京都駅から北野等持院まで七本松通経由で走っていたと思いますが、渋滞等の問題でしょう、いつの頃か走らなくなっていました。そういえば50系統も千本中立売を西へ走っていましたし、過去に25系統(うろ覚え)が三条京阪から宇多野までの間、丸太町智恵光院から北へ今出川まで智恵光院通を走っていたりしました。

七本松通、中立売通、智恵光院通、市内のそれほど広くない西陣地域の道路に、市バスがぐいぐい走っていたなんて信じられないのですが、そんな時代がありました。今では考えられないほど公共交通機関を必要としていたんですね。

岡田健

光都紙工有限会社 代表兼デザイナー 岡田健

西陣の南東?の牛乳屋の息子として生まれ育って五十数年、今は極小印刷会社の代表取締役兼デザイナーです。ウクレレとコーヒーが好きです。

2021.12.02
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早いものでもう12月。朝晩もすっかり寒くなってきて、鉢植えの植物たちの屋内待避の季節ともなってきました。
寳幢寺では、仏教由来の樹木からカレーやアジア料理の材料になる植物など、熱帯の植物を栽培しています。お釈迦様が悟ったとされる菩提樹から株分けされた木(日本国内でお釈迦様の菩提樹を増やす活動をなさっておられる団体があり、譲っていただいたもの)をはじめ、悟りの花でもある熱帯睡蓮、食材としてはカレーの香りがする葉っぱを持つカレーリーフなどなど。気がつけば寒さに弱い植物が多く、また、毎年株分けしたり種から栽培したりするもので、けっこう・・・、増えるんです。
小さな鉢たちは、少しでも暖かな場所にと日の当たる窓際に。背丈のあるものは階段の踊り場など出来るだけ高さをとれるところに。しかし、さすが熱帯の植物。菩提樹などはひと夏で1メートル以上は伸びて毎年背丈を更新していくので、そろそろ天井の高さが足りないな・・・なんて来年の心配をしてみたり。とはいえ、館内を歩く度にそこかしこに緑があるというのもなかなか良い雰囲気です。西陣に暮らすようになって四度目の冬、今年も植物たちと一緒に過ごす日々でおります。

松波さゆり

和裁士 松波さゆり

岡山県出身。布好きが高じて京都で学び暮らし始めて早18年目。プロの和裁士としてテレビドラマの衣装をはじめ様々な仕立てを手掛ける。現在は市民運営の寺院 ”寳幢寺”のスタッフとして日々を過ごしながら、社会や地域に貢献できることを模索しています。

2021.12.01
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先日、三歳の長女の七五三で着物を着て北野天満宮へ。
長女はお姫さまみたいになって嬉しそう。
老松さんで好きなお菓子を選んで、もみじ苑も見頃で、帰りには焼肉を食べる約束をして。

産まれてたった3年、とても長かったような、一瞬だったような…
産まれる前と後では、私の暮らしも人生も大きく変わりました。
寝転がって泣くだけの赤ちゃんだったのに、
すっかり立派に頼もしくなって、でも無邪気で玉のように愛らしく、この上なく尊い、
着物姿の長女を前にうまく言葉にできない感動を抱きました。

つないだ私の手を振りほどいて走りゆく長女の後ろ姿、
着物の袖がなんだか翼のようにみえて、
どうかこの世の中のしがらみや不条理なんてはね退けて、思うままに羽ばたいててほしい。
心躍る日々を送ってほしい。
そう願うばかりです。

いままでは七五三てなんでやるのかなぁ、と思っていましたが、
思いがけず、
とても大切な日になりました。

梅田啓介

クリエイター 梅田啓介

あるときは会社員、あるときはデザイナー、あるときはアーティスト、あるときはおべんとうアーティスト。 楽しいことを求めて。 今年、西陣に家を建てて、引っ越してきます。

2021.11.30
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去年の夏のこと。今や、それがなんであったか忘れてしまうくらいほんとうに些細な、何というわけではなく、ボタンを掛け違えたような心のおさまりの悪さを抱えていた。新しい街に住み始め半年ほどすぎて、生活に慣れてきたからこそ、内に溜まったストレスだったのだろう。
地蔵縁日のある24日、千本上立売にある石像寺、通称・釘抜地蔵に立ち寄った。
石像寺は、弘法大師・空海が創建し、唐から持ち帰った石で空海自らが彫った地蔵菩薩が本尊だ。釘抜地蔵の由来は、人々のさまざまな苦を抜きとってくれるという苦抜(くぬき)地蔵が釘抜(くぎぬき)地蔵になまったという説、室町時代に両手の痛みのためにこの地蔵に祈った大阪商人の夢枕にお地蔵さまが立って、手から釘を抜いたという伝承から釘抜地蔵になったという説もある。境内には多くの釘の奉納がありその信仰への人々の思いを物語っている。同時に地元の人の参拝も多いお寺で、近隣の人が日常的に訪れ、よく手入れされた気持ちの良い風が流れている。
住職の法話を聞きながら、夏の青空と、セミの声と風に揺れる木々の音を聞いていたら、わたしの中の些細なモヤモヤは、いつの間にか消えていた。

川原さえこ

もう一つの椅子 川原さえこ

京都府長岡京市在住。フリーランスのリサーチャー、保育士。「もう一つの椅子」という名義でまちのランドスケープ(風景)研究を行う。東京下町から京都へ来て約1年。観光客でもなく京都の地元民でもない境界の視点でふらりと歩いたまちの景色を描く。

2021.11.29
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<前回からの続き>

西大路通りの待合室の店を出て行った「イワシ」は回遊魚らしく、京都を彷徨っていました。
僕はコーヒーを配達する「イワシ」を街中で見かけたり、以前看板に描いた魚マークのコーヒー豆をイベントなどで見かけたりしていたものです。

そんな感じが3,4年続いた後、

「イワシ」から西陣にお店をオープンするという連絡をもらいました。
待合室で知り合った面々と改装中の店舗へ行った僕は、「イワシ」と町屋の土壁を綺麗にしたり、カウンターの塗装の手伝いを一緒にしたりしました。
そうしてIWASHI COFFEEは無事、西陣の片隅にオープンしました。

西陣には今、コーヒーの「イワシ」がいて、僕は相変わらずそこでコーヒー豆を買ったり、待合室や西陣の店で知り合った人と山を登ったりしています。

実は、新たにオープンした時に山の版画を作って欲しいという事を「イワシ」から言われていたのにずいぶん長いこと放置している。
今年はずいぶん山に登ってコーヒーを飲み、だいぶ調子も戻ってきたのでそろそろ出来る頃だと思います。

景井雅樹

版画家 景井雅樹

京都の版画工房で銅版画を始める。 2006年頃より、毎日の出来事をノートに青いボールペンで描く絵日記形式の作品を作り始める。 一日1ページで現在4000ページほど。まだ毎日描いている。 コーヒーと自転車と音楽の愛好家。

2021.11.28
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多拠点生活サービス「ADDress」のまっさんこと高本です。

幼い頃から大好きな風景〜夕陽が沈んだ後に訪れる街の黄昏時の風景。僕の岡山実家は、路幅が車1.5台分程度の狭いアスファルト街路の住宅地なのだけど、西陣の黄昏時、当時の懐かしい風景に出会えるのだ。暗くなればなるほど昭和にタイムスリップしたような懐かしさに包まれる。それは心地良くも、どこかそこはかとない不安や畏れに似た気持ちにもなる時間。遠くで犬がわお〜んなんて鳴いているのも風情があっていい。

映画「千と千尋の神隠し」で魑魅魍魎が跋扈する現実世界から歪んだ時空間に放り込まれる夕暮れシーンがあるのだけど、怖い反面つい惹かれてしまう光景でもある。黄昏時の語源が「誰そ彼どき」という急な暗がりですれ違う人の顔も不明瞭になるあの不思議な感覚。
それは日常のなかの非日常。これを味わえる贅沢なひとときが人生の楽しみでもある。

西陣の黄昏時、もしも僕とすれ違ったら声を掛けてくださいね!ひょっとしたらびっくりして逃げるかもしれないけれど(笑)

高本昌宏

多拠点プランナー / ADDress 事業企画 高本昌宏

学生時代に伏見と西陣に住んだことがきっかけで、京都では決してメインストリームではないかもしれないこの二地域に惹かれる。多拠点居住サービス立ち上げをしながら、2020年伏見移住。西陣にも同年から通い始め、魅力再発見中。

2021.11.27
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皆様ご無沙汰しております。
オサノートライターの窪田早希です。

「秋のカフェ特集」、見ていただけましたでしょうか?初めての担当企画で苦労もありましたが、編集長の支えもあり、なんとか初めての担当企画を完成させることができました。

さて、「秋のカフェ特集」の制作にあたって今まで以上に西陣を訪れるようになったわけですが、その道中で面白いものを見つけました。

「百二十年余りの歴史と伝統の味
西陣名物 たんきり飴」

西陣のフリーペーパーに携わっている者として「西陣名物」という言葉は見逃せません。
早速お店に入ってお話を聞いてみました。
「たんきり飴って西陣名物なんですか?」と。すると「うちのひいおばあちゃんが勝手に言ってるだけですよ〜もう。」と言われてしまいました。

なるほどそういうことかと思わず笑ってしまいましたが、余計に興味が湧いて一つ購入させてもらいました。生姜がピリピリと効いていてどこか懐かしいおばあちゃんの味がしました。

「西陣名物たんきり飴」、寒い冬に皆さんもぜひいかがでしょうか?

窪田早希

学生 窪田早希

出身は大阪ですが、中高6年間京都の学校に通っていたので京都歴は長いです。地方創生に興味があって大学では政策学を学んでいて、研究者を目指して勉強しています。osanoteを通じて西陣の魅力を発掘&発信していきたいです!よろしくお願いします!

2021.11.26
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小学生の頃、年賀状についているお年玉くじでコダックのポケットフィルムカメラが当たった。父親の一眼レフは重すぎて全く使う気が起きなかったが、軽くて小さいので子供でも使いやすく、パシャパシャと遊びで撮りまくっていた。友達のピース写真やら風景やらプラモデルを砂山に置いたジオラマ風写真まで。しかしポケットカメラでは中々思った感じには撮れず、現像が上がると落胆する事が多かった気がする。

そんな自分の最初のカメラを持ってからもう40年が経ち、現在持ってるカメラは6台。とはいえ全部映像を撮るためのカメラとして使っていて。写真はもっぱらスマホで日常のスナップぐらいしか撮らない。

写真への興味が映像へと移ったのは高校生の頃。姉の友人から8mmフィルムの撮影編集機材一式を丸ごと貸してもらえることになり、映像を撮り始めたからだ。フィルムの映像は何を撮っても新鮮で面白く夢中になった。街に出てなんてことない風景やら物を撮りまくっていた。

今もまだそんな事を続けていて、それが僕の仕事にもなっている。よくやるのは街のちょっとしたパターンを見つけて映像や写真に撮り、加工して空間演出のための映像素材にしている。いま身近な西陣界隈はいろいろと素材になりそうな被写体が豊富で嬉しい限り。

小川 櫻時

映像監督 小川 櫻時

長年様々な映像をを作る仕事をしています。東京、沖縄を経て2015年から京都市在住。近年は、クラフト作家や様々な手仕事をする人々にフォーカスした映像を制作・発表しています。映像空間演出ユニット「SAKKAKU」としても活動しています。

2021.11.25
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ANEWAL Galleryのメンバーは、ANEWAL Galleryとは別に各々仕事をしており、私も別にグラフィックデザイナーとして活動しています。
そして私は、京都建築専門学校の学生が課外活動をしているところへ同行し、広報資料にできる素材写真を撮ったり記事を書いたり等、広報の仕事をしています。
今日は、ちょっとそのお話をしたいなと思います。
京都建築専門学校では毎年11月の上旬、堀川丸太町を下がった堀川遊歩道で、学生たちがお茶室を建築し、お茶を振る舞うという学祭行事をしています。
建築期間はおよそ約2週間ちょっと(その年々の設計図にもよりますが…)。
まず学校で仮組みを行い、どこに何を使うのか材を確認。次に稲刈りをして、苫葺屋根に使うための苫(とま)を作ります。ちょうどこの時期から寒くなり冷たくなった川に足をつけつつ、骨組みと屋根の垂木(たるき)を設置。刈ってきた苫を70m程編んで、屋根に乗せて、土壁を塗ります。最後に竹で装飾をして完成。
簡単に言うと「木造建築の基礎」が工程に凝縮されています。
そんなお茶室の建築や改修工事の実習で訓練された卒業生が、日本各地で活躍しています。
京都建築専門学校では、西陣含め京都の町家が減少する中、在学生や卒業生も一緒になって町家再生に意欲的に取り組んでいます。ちなみに、ANEWAL Galleryも路地奥にある町家再生に取り組んでいます!(笑)
学祭終了後は解体。来年に使えるように残すという三日間限定の建築物になっています。訪れたことがない方は来年、学生の汗と涙の結晶の建築物を是非ご覧ください。

磯村明見

特定非営利活動法人ANEWAL Gallery デザイナー/マネージャー 磯村明見

京都市出身のグラフィックデザイナー。日本の老舗印刷会社と上海の広告代理店を経て本帰国後フリーに転身。NPO ANEWAL Galleryデザイナー兼マネージャー担当。京都建築専門学校広報担当。京都芸術デザイン専門学校非常勤講師。

2021.11.24
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先日19日の夜は「限りなく皆既に近い部分月食」が全国各地で見られました。私と同じように思わず空を見上げた方も多かったのではないでしょうか。

そんなときにふと思ったのが、「最近上を見ることって無かったなぁ」ということ。

何をするにもスマホが便利なこの時代。どこにいても思わず画面を見てしまいがち。更に京都にはそこまで高い建物もなく、上を見ることってあまりありません。

でも、見上げてみると面白いことが!
こちらの写真は千本寺之内交差点から上千本商店街を写した一枚ですが、交差点前の100円ローソンの上(二階部分)を見てみると、テナントの左右で明らかに違う形の建物になっています。
一年以上通っていた場所ですが、これまで全く気付いていませんでした。

どんな歴史を経てこんな形になったのかは定かではありませんが、普段の目線では見えないところにまだ見ぬ西陣の魅力が沢山ありそうです。

三輪浩朔

Laughterロースター 三輪浩朔

2020年10月「Laughter」を開業。21歳までコーヒーを飲んだことがなかったが、タイ北部の農園に直接足を運んだことでその魅力にほれ込む。コーヒーを通じて生産者の思いやストーリーも届け、一杯から笑顔溢れる空間を紡ぐことを目指している。