西陣にまつわる
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山本萌加

Société Nouvelles Lunetts 視覚研究所 主任研究員山本萌加

武蔵野美術大学(工芸デザイン学科木工専攻)卒業後、眼鏡制作者七代目山ノ瀬氏に弟子入り。眼鏡制作の修行と、師と共に眼鏡ブランド〝Société Nouvelles Lunetts 視覚研究所〝の主任研究員てしてお店を運営しています。

2022.04.20
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今回の投稿でちょうど一周して一年と言うことで、改めて西陣が繋いでくれた身近な周りの方々に感謝を込めるコラムにしようかと思います。

京都に来て7年。その始まりの場所が西陣でした。初めての社会人生活がスタートし友人もほとんど居ない中、たまたま出来た近所の友人夫婦。しばしば晩御飯に呼んでくれたりと慣れない土地での生活を2人でサポートしてくれました。ありがとう。

そして、偶然同じタイミングで京都に嫁いできた地元福岡の友人も旦那さんと共に遊んでくれて、またまた偶然な事に今年から西陣に新居を構えご近所さんになりました。いつも楽しい時間をありがとう。

今の師匠とも西陣で出会いました。まだまだ修行は続きますが、生意気な私を諦めずに育てて下さっています。師匠への感謝は尽きませんが、一生の仕事を一から教え導いて下さった師匠にもありがとうございます。

西陣にはまだまだ沢山の出会いや思い出の場所がありますが、
初心忘れるべからずでまた4月から新たな気持ちでスタートし、もっとディープな発見や人との出会いを見つけて行きたいです。

2022.02.24
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今年に入って時間があっという間に過ぎ去り気がつけば、2月ももう半ば。
まだ雪が降る日も続いています。

私は九州生まれでどちらかと言えば夏が苦手でした。が、京都の冬を経験してから一気に冬が苦手になってしまいました。
寒さの質がまったく異なり、良く言われていますがとにかく“芯から冷える”寒さに毎年びくびく、ぶるぶるしております。
しかし、雪を纏った京都の冬はついつい寒い中外出したくなる程に風情を増し、雪景色にうきうきしてしまいます。

風情を楽しむ事が出来るようになったのは確実に京都に来てから。

数年前の大雪の日は、師匠に誘われて雪に覆われた金閣寺を見に行きました。その時はなぜ朝早くから寒い中わざわざ行くのだろうか?と疑問だらけでついて行きました。人混みの中見た雪の白と金のコントラストと池の青い氷は今でも脳裏に焼き付いています。

もう一つは紅葉の時期。
九州では紅葉狩りに行くという慣習は持ち合わせていなかったのですが、京都では桜の開花と同じ盛り上がりを見せている事に驚きましたし、気が付いたら毎年紅葉狩りに行っている気がします。

風情を愛でるという習慣を楽しむ事ができ、あ、大人になれたなと思った今年の寒い寒い冬でした。

2022.01.22
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新年明けましておめでとうございます。

去年は西陣についてのコラムを書くという貴重な機会を頂き実り多き一年になりました。
本年もどうぞ宜しくお願い致します。

新年初の投稿は、かわいい訪問客のお話し。

去年末に、
総合学習の一端で、“我がまち西陣について考える”というテーマを携え二条中学校の学生さん達が私たちの眼鏡工房アトリエとサロンに見学に来て下さいました。

師匠がアトリエを、私がサロンを担当し2グループにそれぞれローテーションで回って貰いました。

学生からは主に仕事についての質問や西陣の好きな所などを聞かれたのですが、余った時間にこちらから生まれ育った西陣というまちをどう感じているのか聞いてみました。

・若者が少ない・遊ぶ場所が少ない・もっと人が集まるまちになってほしい・その為にSNSなどを駆使して国内外に魅力を発信した方が良い・もの作りのまちに誇りを持っているが、自分達には当たり前の環境なので発信すべき魅力が見つけづらい

という様な再認識すべき素直な意見でした。
一方で、子供たちが“我がまち”について考えることが出来るコンテンツが沢山ある歴史ある西陣で育った子供達を羨ましく感じました。

2021.12.12
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正直に申しますと、
だんだんとコラムのネタがすんなりと出てこなくなりました。

なので、今回は私のテーマでもあった“ものづくり”でも“女子弟子の実態”のお話でもなく、今放送されている朝ドラに因んで“おはぎ”のお話しにしようと思います。

私の今までの人生であまりおはぎには馴染みがなく、和菓子屋さんに行っても積極的には買わない存在でした。しかしやはり京都。そして西陣。毎日でも食べたい!と思えるおはぎがなんと西陣に二軒もあるのです。

一軒は、言わずと知れた塩芳軒さん。こちらのおはぎは今年初めて土用の日限定のお茶席で頂きました。これぞ京都!と言うような洗練されきった上品極まりないおはぎでした。

もう一軒は祇園饅頭出水店さん。
こちらは庶民的で懐かしい素朴なおはぎです。
いつも朗らかなおじいちゃんとおばあちゃんお2人でひっそりとやられているお店です。

実は、塩芳軒さんで土用の入りの日に頂いたものはおはぎとは呼ばず“あんころ”だそうで、その名は“餡衣餅”から来ており暑い夏場にせいのつくようにと工夫を重ねて出来たお菓子だそう。

こんな知識を学べるのも京都西陣だからこそですね。

2021.11.12
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西陣夜散歩。

もの作りの仕事はほぼ一日中座りっぱなしになります。
最近、運動と気分転換を兼ねて仕事が終わってから師匠と“ぶらり夜散歩”をしています。

エリアは上京区内なのですが、西陣エリアは見所というか、散歩しがいがあるエリアなので度々脚を運んでいます。

まず、夜散歩の良い所は昼間とは景色がガラリと変わるところです。いつも日中に通っているお馴染みの道でもあれ?こんな所あったかな?と新しい発見が毎回あります。

特に京都は他県に比べて街頭も少なく、ネオンや明るい看板も殆どありません。表に面したお店なども店内がオープンに見えるというよりかは、小さなと看板と暖簾のみで判別する他ないようなお店が多いような気がします。
なので、日が落ちて暗くなり店内からの灯りで初めて発見出来るお店も沢山あります。

さらに見過ごしてしまう様な細い路地も、路地奥の灯りで見つけられたり探検気分を存分に味わえるエリアが沢山あるのです。いつも懐中電灯装備して歩きます。

1番の発見は、懐中電灯片手に散歩している人の多さ!
小さい子からお年寄りまで皆さん探検しているようです。。

皆様も夜散歩ぜひ!

2021.10.13
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モノの値段。

前回の続き。。
西陣で個人で服飾をされている方に偶然出会い、仕事用エプロンの複製をオーダーしました。

喫茶店で打ち合わせ。
お会いするのは2回目で、同じ年齢だという事もあり自己紹介も兼ねてお互いの事を楽しくお喋りし、エプロンを見てもらいながら納期と値段の見積もりをお聞きしました。
そうしたら、その方から幾らにしますか?幾らなら出せますか?と予想外の質問が返ってきました。

私は服飾関係のお仕事の相場というものが全く分からなかったので
凄く戸惑ってしまいました。

その方は業界の値段の付け方に疑問を持っており、値段が理由で頼み難かったり嫌悪感を抱かれることに抵抗感があるようで、お互いが気持ちよく洋服と向き合える値段をお客様と相談しながら決めているとのことでした。

そのような値段付けをしていることに目から鱗でした。
最低製作費もきちんと提示してくださりましたが、それを見てどうプラスしていけば良いか全くわからず。。結局私ももの作りの仕事をしているので製作者をリスペクトしたく言い値でお願いしました。この方法は難しさもありますが、“想い合う”価値を教えてもらう良い機会となりました。

2021.09.12
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西陣の救世主現る!

普段、作業している師匠のアトリエは白で統一されています。
作っているモノが何からも影響を受けないようにという師匠のモットー。
もちろん作業着のワークコートやエプロンも白で綿100パーセントという決まりがあります。

師匠は白衣コレクターでもあるので様々な国の軍ものデッドストック白衣を所持しており、それに影響を受けて私も白エプロンを集めるようになりました。

その中で着心地、見た目、使い易さで1番のお気に入りが昔のチェコの軍もののナースエプロン。
もう何年も主役で使って穴も開いてきたので、同じ形で探しているのですが残念ながらなかなか手に入りません。
自分で作ろうかな、頼んで複製してもらおうかなと思っている内に時間は過ぎて諦めかけていました。

そんな時、私たちの店舗である“視覚研究員”にご来店下さったお客様の1人が私のそのボロのエプロンを褒めて下さいました。
嬉しくてお話ししていると、その方は西陣で洋服を作っている作家さんで、なんと私のエプロンも複製出来るとか!

さっそく複製の注文をお願いし、明日打ち合わせでお会いする予定
です。次回に続く。

2021.08.13
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眼鏡選び。

私は壬生にある自分達のお店以外に、街中の眼鏡屋さんでもバイトをしています。

眼鏡選びの悩みで1番多いのが「自分に合った眼鏡がどんなものか分からない」です。さまざまな悩みや目的の中で京都だなー!と思う悩みを持ってご来店される方が少なからずいらっしゃいます。
それは、「着物に似合う眼鏡」を探しに来られる方々。
確かになるほど!

着物と合わせると眼鏡だけが浮いてしまう。や、着物の淡く美しい絵柄にそぐわないといった事があるようです。
そういった場合、選択肢がフレームがないタイプのもの(ツーポイント)か、細いメタルフレームの肌馴染みが良いものに絞られてしまうのですが、それはそれで華やかな着物に対して顔周りが寂しくなる、せっかく着物でおしゃれしているのだから眼鏡もそれにあったおしゃれな物を掛けたい!となり、店員としても一緒に悩んでしまいます。

そもそも一般的に売られている眼鏡は基本的に洋服に合わせてデザインされているものがほとんどです。西陣で織物関係のお仕事をされてる方々ももしかしたら同じ悩みを持っておられるのでは。。

2021.07.14
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今月はズバリお金事情についてです。西陣にも沢山のもの作り修行中の方がおられます。お給料は仕事それぞれだと思いますが、弟子が集まると大抵お互いのお給料の話になりがちです。昔からの徒弟制度では丁稚奉公が当たり前でしたが、今の時代、修行の身でも多少のお給料は皆さん頂いています。そうしなければ誰も入ってこないからです。しかし“1人暮らしは厳しい”程度なので皆さん悩まれています。因みに私の所は無給でした。生活費は修業の傍らのアルバイトと親からの仕送り。もちろんそれを理解した上での弟子入りでしたが、2.3年目になるとバイトもし休みなくこんなに頑張っているのに何故無給なんだとやるせ無い気持ちで一杯だった時期もありました。その度に仕事に対しての迷いも何度も生じます。仕事を継承する=続けるという事は色々な場面で覚悟を求められます。先代の方々も同じように必死になって守ってきた仕事なのだから当たり前と言えばそうなのですが。そしてもう一つ必要なものは周りの理解です。親からの支援、友人達にも沢山奢ってもらったり応援して頂きました。そうやって支えられてる人と仕事がある事を少しでも理解して頂けたら嬉しいです。

2021.06.15
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今回は眼鏡だけに、ものづくりにおける“手”ではなく“目”に注目してお話しします。
まず仕事を習い始めて1番戸惑った事はスケール感でした。1ミリ以下の精度を求められる眼鏡作りと今までの学生時代のものづくりとの精度のギャップに慣れるまでに時間がかかった事を覚えています。
師匠は良く“目が育つ”という言葉を使うのですが、細かい仕事にはそれに合った目を持たなくては仕事になりません。出来てる、見えてると思っていても、師匠から指摘を受けると自分が全然見えて無かった事に愕然とすることが今でもあります。当たり前ですがどんなに技術があっても良く見えてなければ良いものは絶対に出来ません。いつも師匠の目(=精度)が欲しいなと思ってしまいます。さらに眼鏡を作る上で視力とレンズについての知識も必須となります。特にオートクチュールでご注文を頂いた場合はお客様の視力を反映してフレームの型やデザインを考えなければなりません。まさかものづくりの仕事に就いて視力検査が出来るようになるとは思ってもみませんでした。
目が見える事の認識がだいぶ変わったように思います。
皆さまも“目”を大切にして下さい。