西陣にまつわる
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中島慶行

京都市小川特別養護老人ホーム 施設長中島慶行

立命館大学大学院社会学研究科博士前期課程修了。 2009年より2年間、京都市小川特別養護老人ホーム副施設長兼京都市上京区地域介護予防推進センター長を務めたあと、伏見区の施設に異動。 2019年、京都市小川特別養護老人ホーム施設長兼京都市上京区地域介護予防推進センター長として復帰。 銭湯と牛乳とじゃこ天が好きです。

2022.12.28
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月に1回、上京区役所で、式恵美子さんが代表を務める「つるかめ笑顔クラブ」主催の「思い出語りの会」が催されています。
毎回、設定されたテーマに沿って、参加者がめいめいに思い出を語り合う、集いの場です。
コロナ禍にあっても、イヤホンマイクなどのIT機器を活用して活動を継続され、先日、節目の50回を迎えられました。

 

この日のテーマは「恋文の思い出」。
20人くらいの参加者の、恋文にまつわる思い出話を聞かせていただく中で、いちばん印象に残ったのは…

 

お兄さんのおさがりのコートを着て、バスに乗っていた女学生の私。
男子生徒が私の顔を覗き見て一言。
「なんや、女か」
顔から火が出る私。
そんなとき、別の男子生徒が「やめろよ、かわいい女性じゃないか」と。
私を庇ってくれた男子生徒への思いは日に日に募り、ついに、恋文を書いて渡そうとしたところ、その彼が、かわいい女性と連れ立って歩いているのを見てしまった。
渡せなかった恋文は、今も心の中にしまってあります。

 

…というもの。
お年寄りたちが、少し恥ずかしそうに恋文の思い出を話して、それに皆が熱心に耳を傾ける、とても素敵な時間でした。
いくつになってもコイバナは盛り上がるものです。

2022.10.22
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私事ですが、夏にコロナに罹患して自宅隔離を余儀なくされました。
あまりにもすることがないので、かつてないほど読書に耽り、消化不良になりました。

 

そんな中、人に勧められて「ファンダムエコノミー入門」という本を読みました。
簡単に言えば、ファン文化が参加型の新しい経済圏を生み出す、という内容ですが、そういう意味では「西陣」も、西陣ファンたちが参加して、新しい文化や経済を生み出しているように思います。

 

以前、「つぎの西陣をつくる交流会」でのプレゼンを聞いたときから、シェアサイクルPiPPAのことが気になっていたのですが、最近、Circular Economyについて学ぶ機会が増えたことで、あらためてその素晴らしさを実感して、今ではすっかりPiPPAファンです。
そんなわけで今月から、うちの施設の駐車場の一画がPiPPAの駐輪ポートになりました。

 

西陣のまちはコンパクトで、そこら中に見どころがあるので、ポタリングに適しています。
ちょうど今、京阪電車とPiPPAとで、西陣呼称555年記念事業と連携した「駅から西陣をポタリング」というイベントが開催されています。
個人的には、そのうち他の事業所も巻き込んで、PiPPAを利用した福祉スタディツアーなんかが企画できたらと思っています。

2022.08.06
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今年は、A-KIND塾というところで学びを深めています。

塾長はアミタホールディングス代表の熊野英介氏で、講義では、グローバル・サプライチェーン・リスクとか、circular economyとか、福祉分野の世界だけに留まっていては耳にすることすらない言葉がたくさん出てくるので、ついて行くのに精一杯で、その都度調べたり人に聞いたりしています。
塾生の年齢も職業も様々で、普段あまり接する機会のない分野の人たちとの刺激的な会話は、自分の狭い見識をぐっと拡げてくれるような気がします。

こうやって新しい世界に飛び込むたびに、いくつになっても知らないことがたくさんあって、結局、人生、死ぬまで勉強なのだなあとあらためて思います。

ちなみに、アミタホールディングスは、築150年の京町家を改装した「風伝館」という建物を所有されていて、市民活動と事業活動の垣根を越えた社会問題解決を探る「場」として開放されています。
その「風伝館」が室町通沿いにあって、実はしょっちゅう前を通っていたことも、つい最近まで知りませんでした。

「西陣」は非常にコンパクトな街ですが、それでもまだまだ知らないことがたくさんあるのだろうと思います。
いつまでも好奇心旺盛でいたいものです。

2022.05.25
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木曜日の午後は、佛教大学で非常勤講師をしています。
帰りはいつも千本通から適当に路地に入り、町家などの街並みを眺めながら、ぶらぶら歩いて帰ります。
この日は、源湯さんに自分のコラムが飾られていると聞いたので、ふらっと覗いてみました。

昼間だったこともあり、広い浴室を独り占めすることができました。
井戸水を薪で沸かした熱めのお湯が心地よく、いろんな湯船を堪能しました。
風呂好きが高じて修士論文のテーマを「高齢者とお風呂」にした私にとって、450円で極楽気分が味わえる銭湯は日本の宝です。

お湯の中に身体を沈めると、アルキメデスの原理によって手足が動かしやすくなるので、リハビリテーションの効果が得られやすくなります。
また、筋肉がほぐれて関節の可動域が広がるので、より高い効果が期待できます。
自宅の狭い浴槽だと、どうしても身体の動かせる部分が限られてしまうので、たまには銭湯に行かれると良いのではないでしょうか。

風呂あがり、何とも居心地の良いくつろぎスペースで、籐の椅子にもたれて冷たいジンジャーエールを飲みながらワンピースを読んでいたら、いつの間にか眠っていたようでした。
何とも贅沢な時間を過ごすことができました。

2022.03.30
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私たちのセンターでは、介護予防のための運動や栄養などの教室を開催しています。
でも、教室に来ているときだけ運動して、あとは家でゴロゴロしているのではあまり効果がありません。
少しずつで良いので、毎日継続して習慣化することが大切です。

大仰な運動でなくても、ただ歩くだけでも、健康への効果は計り知れません。
ウォーキングは、高血圧の改善や心肺機能の強化、骨の強化、肥満の解消など、身体にさまざまな好影響を与えます。
さらに、歩くために外に出かけることによって、人と関わる機会が増えたり、交友関係が広がったりすることが期待できます。
人との良好なコミュニケーションは、ストレスの軽減や抑うつ傾向の改善にも繋がります。

とはいえ、高齢になると、歩き続けることがしんどくなります。
ですが、まちの至るところにベンチなどのちょっとした座るスペースがあれば、休み休み遠出することもできるのではないかと考えます。
そして西陣のまちには、案外そんなベンチがたくさんあるのです。

そんなわけで先日から、当施設の前にもベンチを置いています。
お時間ある方はどうぞ座りに来てください。
そして人見知りの私と、たわいもない話をしませんか。

2022.02.26
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先月下旬にオミクロン株と思われるクラスターが発生し、その対応に追われ続けた1ヶ月でした。
実感として、世間が思っているような無症状者や軽症者は少ない印象です。
やはり何がしかの症状は出るし、重症化する人はします。
感染スピードもべらぼうに速いので、気付いたときには感染が拡がっています。

救急車を要請しても搬送先が決まらず、搬送先が決まっても入院させてもらえなくて、結局施設に戻ってこられるケースも多々ありました。
感染予防のため極力部屋から出ないようお願いしていたこともあって、入居者の多くはADLの低下が顕著です。
この間、デイサービスやショートステイも休止せざるを得ず、利用予定だった皆さまにはたいへんなご迷惑をお掛けしました。

先日、ようやくクラスターは収束しましたが、当然、今回明らかになった感染拡大防止に係る課題については、きっちりと改善に取り組んでいきます。
一方で、低下したお年寄りの生活の質をどう立て直していくか、ということは、感染拡大防止と同じか、それ以上に大きな課題です。

「普段の暮らし」が大きく損なわれる中、私たちに何ができるのか、皆さまのお知恵も拝借しながら考えていきたいと思います。

2022.01.24
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高齢者福祉施設小川は、1997年に惜しまれつつ閉校した小川小学校の歴史と伝統を受け継ぎ、2002年1月10日に開設しました。
このたび、地域の皆さまに支えていただきながら、めでたく開設20周年を迎えることができました。
日頃のご厚情に深く感謝いたします。
とはいえ、私個人としては、2009年4月からの2年間と、2019年4月から現在に至るまでの通算5年弱の在籍期間であって、20年の歴史の隅っこのほうに、ちょこっと腰かけさせていただいているくらいのものなのですが。

20年の節目ということで、本当は地域に還元できるようなオモシロイベントを開催したかったのですが、このようなご時世でもあり、断念せざるを得ませんでした。
その代わりと言っては何ですが、記念品として、西陣麦酒さんのオリジナルラベルのビールと、NEW STANDARD CHOCORATE 久遠さんのチョコレートを用意しました。
めっちゃ素敵じゃないですか?
哀しいかなデザインに疎い私たちでは、とてもこんなにオシャレな感じには仕上がらなかったと思います。プロってすごい!
上京区中の皆さんに配り歩きたいところですが、数に限りがあるため関係者のみの配布となっています。申し訳ございません。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

2021.12.14
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人と話すと、思いもかけず勇気づけられることがあります。

先日、元西陣小学校で催された上京区のまちづくりの会議で、バザールカフェの狭間さんに会いました。
コロナ禍以降は会う機会がなかったので随分久々でしたが、お互いオサノートでコラムを書いていることから、「いつも読んでますよ」みたいな会話になりました。

個人的に、狭間さんの書くコラムには勝手にシンパシーを感じていて、毎回感心したり共感したりしていたので、そのことを伝えたところ、狭間さんも僕のコラムの内容を覚えてくれていて、率直な感想を述べてくれました。

毎月このコラムを書いているものの、あまり感想などを聞く機会もないので、いったい誰に読んでもらえているのか、こんな内容でいいのか、などと思い悩むこともあったのですが、そんなふうに思っていたのが自分だけじゃないとわかって、心強さを感じました。

悩んでいるのが自分だけじゃないとわかったところで、それで問題が解決するわけではないけれど、同じ気持ちでいる人の存在が、こんなにも心を穏やかにするのだ、ということをあらためて感じたできごとでした。

※写真はバザールカフェでスクエアステップに挑戦しているところです。

2021.11.15
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11月22日は、学生時代の恩師・廣末利弥先生の命日です。

1980年代初頭、まだ老人福祉施策が十分行き届いていない時代、西陣地域を中心に、機織りの音が聞こえる場所で余生を過ごしたいという願いを集めて「北・上京老人ホームをつくる会」が結成されました。
その願いは社会福祉法人七野会へと結実し、廣末先生はその代表を長く務めておられました。

卒業後も勤める法人は違っても、飲みに連れて行ってもらっては、高齢者福祉や社会のあるべき姿について意見を交わしました。
酔った先生はいつも、「寄付を集めて回ったときに一人暮らしのおばあさんが箪笥の奥から出してきた、しわくちゃのお札の温かみを忘れたことはない」と、同じ話をされるのでした。
晩年は、十分な介護サービスが受けられない過疎地へのサービス提供に熱心でした。
「お前がやれ!」と叱られたこともありますが、不本意ながら今も着手できていません。

今、先生の「福祉社会の担い手に求められるもの」という論文が手元にあります。
介護保険制度がスタートした直後に書かれたものですが、ここに書かれている「介護保険制度が老人福祉のすべてではない」という言葉は、しっかりと後進に伝えていきたいと思います。

2021.10.16
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現在、佛教大学の社会福祉学部の学生が当施設に実習に来ています。
この機会に多くのことを学ぼうという姿勢が感じられて、自分の学生時代の態度が恥ずかしくなります。
もっと勉強しておいたら良かったと思う反面、いつからでも挽回がきくとも思っていて、結局、いくつになっても日々勉強だなとつくづく感じます。

学生時代といえば、佛教大学の近くに「タンポポ」というラーメン屋さんがあって、当時付き合っていた彼女がここのラーメンが好きで、よく食べに行っていました。
ちなみに、伊丹十三の映画「タンポポ」のモデルになったのは四条大宮の「珍元」ですが、こちらは残念ながら2019年に閉店されています。

社会人になって間もない頃、ラーメン好きの先輩に連れられて毎日のようにラーメンを食べ歩いていました。もう20年以上も前のことなので、お気に入りだったお店がなくなっていたり、当時は想像もしなかった斬新なお店ができていたりして、諸行無常の響、盛者必衰の理を感じます。
そんな中でも、堀川商店街の「笑麺」は変わらず好きです。

こんなとりとめもないことをつらつらと書いたのは、先日、佛教大学のある紫野あたりも西陣だよね、という話をしていたからでした。