地図の点と線が実際の景色とつながると、まちあるきはたのしくなる。碁盤目の京都は、東西南北を把握すると地図感覚が身につきやすい。京都御所ある方角の北に向かえば上ル、京都駅の方角の南に向かえば下ル。 初めて友人たちと京都を旅した2003年、私は上ル下ル(あがるさがる)を理解していなかった。エリア名と案内看板を頼りに、面の感覚で歩いていた。もともと地図は好きだが方向音痴。わからないので地図もグルグル回す。いまは、地図は回さなくなったし、観光客向けに北と南が逆さになった絵地図にこちらの目が回るくらいには京都の地図感覚に慣れてきた。 次に縦の通りと横の通りが繋がれば、座標軸のように場所が思い浮かぶようになる。2つの通り名で場所が特定できる「辻の感覚」をはじめて体感で掴めたのは、中京区の三月書房(2020年末で廃業)へいくとき。住所ではなく「寺町二条上ル」という呪文だけでたどり着けた時「そういうことか」と合点がいった。だが、西陣は私の中では未だ面の感覚だ。慣れなくて、どこを歩いているかわからない。だから迷う。いまはまだ迷うことを楽しみながら、徐々に点の感覚を掴み、西陣散歩をしてみたいと思っている。
もう一つの椅子 川原さえこ
京都府長岡京市在住。フリーランスのリサーチャー、保育士。「もう一つの椅子」という名義でまちのランドスケープ(風景)研究を行う。東京下町から京都へ来て約1年。観光客でもなく京都の地元民でもない境界の視点でふらりと歩いたまちの景色を描く。