西陣にまつわる
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西陣にまつわる人々が、綴るコラムCOLUMN

2021.08.01
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三菱証券細字用ボールペン。青。

僕が描いている日記は全てこのボールペンだ。今はもう廃番なので10年くらい前にまとめて入手したものにインクを詰め替えて使っている。
なぜ青なのかも今となってはよくわからないのだが、他の色にしようと思ったことはない。

それで青で統一された日記のページなのだが、時折、色の入ったシーンが存在する。

何年か前の8月の暑い昼間、近所を散歩していた時に北野天満宮で七夕の飾り付けを見た。
北野天満宮の七夕祭りは旧暦で行われる。
真夏のギラギラした光にカラフルな短冊が映えていた。
おそらく7月ならこうは見えなかっただろう。

そんなことに気がついた時だけ、忘れないようにと青の中に色を入れる。

今年も8月半ばまで七夕の短冊は飾られているので、また色を感じる瞬間はあるのかもしれない。

景井雅樹

版画家 景井雅樹

京都の版画工房で銅版画を始める。 2006年頃より、毎日の出来事をノートに青いボールペンで描く絵日記形式の作品を作り始める。 一日1ページで現在4000ページほど。まだ毎日描いている。 コーヒーと自転車と音楽の愛好家。

2021.07.31
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多拠点生活サービス「ADDress」のまっさんこと高本です。

学生時代に住んでいた場所の真向かい辺り、堀川商店街の中に「HORIKAWA AC Lab」(ほりかわえーしーらぼ)という不思議な書店が突如出現したのが2018年5月のこと。「世界でたったひとつの自分の本」を作れる本屋を目指し、大垣書店の御曹司大垣くんが自ら企画、多彩な紙の量り売りやオリジナルノートを活版印刷で作れるワークショップを仕掛けたり、とにかくワクワクする空間だった。(お店は今年の3月で一旦閉業。これから新たな仕掛けが西陣界隈でありそうな気配)

ドイツ製活版印刷機を使って、銀河鉄道の夜のカンパネルラのように活字をひとつひとつ探しながら組み合わせて印刷するワークショップに参加したときのこと。僕の娘がその年の正月に書き初めしたことばが頭にすっと出てきて、迷うことなく一文字ずつ選び出して、組んでみた。

「じゆうにいきる。」

また近い将来、西陣で活版を組む機会があればどんなに楽しいだろう。
みなさんはどんな言葉を選びますか?

高本昌宏

多拠点プランナー / ADDress 事業企画 高本昌宏

学生時代に伏見と西陣に住んだことがきっかけで、京都では決してメインストリームではないかもしれないこの二地域に惹かれる。多拠点居住サービス立ち上げをしながら、2020年伏見移住。西陣にも同年から通い始め、魅力再発見中。

2021.07.30
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島根県隠岐諸島の海士町という地域で暮らしています。
本土から船で3時間、経済破綻寸前だった離島から若者の集まる場所へと変貌を遂げた土地です。非日常を送るこの島で「西陣」を感じる瞬間がありましたので、今回はそのことを書きたいと思います。
移住の多い島のあちこちでは、せっせと町営住宅の建設が進んでいます。それでも家が追いつかず、シェアハウスでの暮らしがどうも当たり前のようで、例によって5人と共同生活をしております。
Facebookに慣れるためスマホ片手に奮闘していた時、西陣麦酒の醸造担当の林田さんのお名前が表示されました。海士町民との繋がりしかないのに。フリーペーパー第1号の取材でお世話になったことをなぜスマホが知っているのか不思議に思っていると、共通の友達として同居人の名前がありました。
林田さんがまだ醸造を始められる前に、とある合宿所で夜な夜な語り合った仲だとのこととでした。得意げに話す当時のことを聞きながら、人と人が織りなす街は京都を遠く離れても紡がれていて、どこまでもご縁だということを痛感しました。
第2号は8月発行予定です。これまでのご縁に感謝いたしますと同時にこれからのご縁にも胸を高鳴らせております。

土路生知樹

綴り手/運営 土路生知樹 オサノート

フリーペーパー編集長。上京区在住でデザイン・建築を専攻する学生です。大学3年を終え、土地への愛着や人の居場所についての関心が高まり、気持ちの赴くまま休学し、旅へ出ました。島根と福島での活動(居候)を終え、現在は京都に戻り、改めて西陣の居心地を満喫中。

2021.07.29
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京都に住むまで北野天満宮には一度も行ったことがなかったが、そこから歩いて二分ほどの場所に住居を借りたことでよく行く身近な神社になった。敷地も広く社の造形も特段に美しいので何かとフラッと訪れている。境内では2月頃から梅が咲き、初夏にはもみじの新緑、晩秋の紅葉と季節をより色濃く感じられる。

 

そういうわけでお気に入りの散歩コースなのだけれども、その境内にちょっと不思議なスペースがある。北野天満宮の公式ページには「絵馬所」とあるその建物には内外上部に奉納された大きな絵馬がぎっしりと飾られている。かなり古く痛み方が激しいものが多く、その歴史が重ねられた迫力には圧倒される。しかしこの場所は休憩所も兼ねられていて、その絵馬群のすぐ下には皎々と光り輝く自動販売機がビッチリと並べられているのである。
古く痛んだ重厚な絵馬の様相とは裏腹に、光り輝くエレクトリカルな自販機の組み合わせは謎のJAPAN感。時空が歪んでくる様な不思議な気持ちになる場所でとても気に入っている。

 

小川 櫻時

映像監督 小川 櫻時

長年様々な映像をを作る仕事をしています。東京、沖縄を経て2015年から京都市在住。近年は、クラフト作家や様々な手仕事をする人々にフォーカスした映像を制作・発表しています。映像空間演出ユニット「SAKKAKU」としても活動しています。

2021.07.28
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西陣の空。
私は自然物も人工物も好きである。
今回はその中でも空に注目した。
空を眺めたり、月を星座を探したり。
また、空の色の移り変わりはとても美しいと思う。青色から茜色に墨色になるまでそれからも多様な姿を見せてくれる。
大学生の時、空にまつわるプロダクトを発表したことがあるほどに、空はよく眺めていた。

西陣で縁あって働くようになってから、慣れない仕事に空を眺めることを忘れていたことに気付く。
それは仕事が夕方頃に終わった時のこと。
久しぶりにふと見た空は茜色朱色橙色と混ざって神々しかった。また、空だけでなくお寺の樹木たちとのコントラストがここでしか見れないひとときを見させてくれた。

人は忙しくてなにふりかまえない時、空を見ないように思う。空を見るだけで落ち着く、そんな時があることもみんなに知って欲しい。
そう、思っている。
それからは仕事帰りによく空を見る。
どの場所で見ても同じ、とは思わない。
その場所その場所で目に映るものは違うから。

西川緑

NPO法人 ANEWAL Gallery 西川緑

NPO ANEWAL Gallery スタッフ。大学卒業後、ANEWAL Galleryに携わっています。

2021.07.27
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コーヒー屋として日々お店に立つ私だが、実は筋金入りの鉄道ファンである。
小さい頃から駅のホームに何時間もへばりついては母親を困らせていたらしい。

中学生くらいになると、青春18きっぷで色々な場所に旅をした。
京都にも何度か足を運んだが、一番感動したのは今でも市内を路面電車が駆け抜けていることだ。地元名古屋では私が生まれるずいぶん前に廃止されてしまったため、生で見る路面電車に何枚もシャッターを切った。

今となっては市内を駆け抜ける路面電車といえば「嵐電」だが、その昔は京都市電が街中に走っていて、千本通にも壬生車庫前から千本北大路を結ぶ千本線が1912年から1972年までの60年間に渡って運行されていたらしい。
調べてみると、見慣れた千本通を路面電車が走っている写真が何枚も出てきてちょっと不思議な気分になった。

そんな京都市電を置き換える形で誕生した市営地下鉄も今年で開業40周年。さらに、今年の3月には京都市電の関係資料が市の有形文化財に指定されたらしい。

今度の休みにはそんな市電の歴史をたどりながら街歩きしてみようかなと思う。

三輪浩朔

Laughterロースター 三輪浩朔

2020年10月「Laughter」を開業。21歳までコーヒーを飲んだことがなかったが、タイ北部の農園に直接足を運んだことでその魅力にほれ込む。コーヒーを通じて生産者の思いやストーリーも届け、一杯から笑顔溢れる空間を紡ぐことを目指している。

2021.07.26
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暑い。まったくもって暑い。

梅雨が明けたと思ったら、いきなりの猛暑。さすが京都の夏である。
鬼アチィ。

西陣に引っ越してきて8年ほど。恐らく150年以上前に建築された町家をリノベーションして住んでいるのだが、江戸時代の流れをくむ厨子二階(通称 中二階)の暑さは半端ないのだ。夜になっても全く温度が下がらない。

上がった瞬間に意識が飛びそうになるが、流石に最近は慣れてきたのか?意識を保ちつウロウロ、寝る前の準備も慣れたものになってきた。慣れってすごい。

ところで梅雨が明ける時期といえば祇園祭。

今年は鉾も立ち、見学にくる人たちも街に繰り出している。コロナ禍での疫病退散の鉾を見ると、少しずつ私達の住む世界も落ち着きを取り戻してきたのかなと安堵する。今年はご縁があって月鉾の粽を玄関に祀らせて頂きました。

皆さん、病魔の恐れも忘れないようにしなければならないが、熱中症にもくれぐれもお気をつけて。

ミツギタカユキ

デザインカタリスト ミツギタカユキ

20歳より渡米し、大学にて彫刻からインタラクティブアート、デザインなど幅広い分野を学びつつフリーのデザイナーとして活動。帰国後京都に移住。現在西陣にてデザインカタリストとしてウェブ制作からデザインに纏る企画・運営など幅広い分野で活動を行う。

2021.07.24
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梅雨が明け、子どもたちは今週から夏休み。
お道具箱やハーモニカ、みんな大きな荷物を持って大宮通を歩いています。
ミライブラリでもいよいよ朝から賑やかな毎日がはじまります。
子どもたちの声をいろいろ聴きながら、夏休みに向けての最後の準備を進めています。
声と言えば、前回のコラムでも、子どもたちから夏休みの計画の声が
聴こえてくるというお話をしました。
最近も、もう間近にせまった夏休みのやりたいことの話でよく盛り上がっています。
「クワガタを捕まえたい!だから仕掛けを研究する!」
「夏休みをつかってマンガを完成させたい!」
「キャンプに行って魚を釣る!」
といった感じで子どもたちのやりたいことは様々ですが、
昨年に比べ、夏休みを待ち遠しく思う気持ちがみんな強いように感じて、
やりたいことを話している顔がみんないきいきしていて。
いろんな考えがあるかと思いますが、
子どもたちの夏はやっぱりこうでないと、と密かに嬉しく感じています。
(写真は子どもではなくおとなが捕まえたクワガタ。おとなでもテンションあがります。)

村上弘

特定非営利活動法人 代表 村上弘

特定非営利活動法人SOWERS代表 放課後の時間に、多様な体験を届けるafter schoolミライブラリを運営。子どもたちの今とこれからを考え、放課後の選択肢とその可能性の拡張を目指し、日々活動しています。

2021.07.23
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実家を離れて大阪に下宿をしていた頃
近所の人との交流は皆無だった。
アパートという集合体にも関わらず、唯一のコミュニケーションはうるさいですというクレームのノックだけであった。

西陣に移り住み、小さな路地にお店を構えるいま、近所とのコミュニケーションは多種多用だ。

店の前の子供とは戯れあい、その子供に時折おじいさんが怒号をあげ、昔ながらの回覧板を回し、ダムダムとバスケットボールが跳ねる音を聞きながらコーヒーをいれ。
挨拶ついでに少しだけ会話をする。

当時の自分からしたらこの距離感は新鮮である。めんどくさいこともあるけどいいこともたくさんあるよ。近所とのコミュニケーションをとるのは昭和の話と思っていた学生時代の自分に教えてあげたい。

変わりゆく路地の中に
これからも変わらない昭和の香りが残るといいな。

森 風渡

風とCOFFEEオーナー 森 風渡

2020年10月に"風とCOFFEE"を西陣京極にオープン。コーヒー屋には不向きとされる入り組んだ路地奥にて自家焙煎を行う傍ら、京都で1番ディープな路地(自称)である西陣京極に新たな風を吹かせるべく奮闘中。

2021.07.22
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バザールカフェでは複数のシェフが、それぞれにルーツのある国の家庭料理を日替わり料理としてふるまっています。タイ、フィリピン、インドネシア、韓国など。いつだって目にも舌にも楽しい料理ばかりなのですが…先日、開店前に味見をした時のこと。

あれ、このスープ何入れた?と店長。
するとシェフは「ミント入れたらおいしいかなと思って…」とバツが悪そうな顔。
まずは店長、「悪いとかじゃないよ!」と一言。それから、ハーブの香りが苦手な人もいること、今後ハーブを使用するときは通常のスープと分けて作る提案などを、丁寧にシェフに伝えていました。キッチンに居合わせたボランティアの方やスタッフも次々に意見を出し、シェフも納得した様子で、すぐに和やかな雰囲気に。

自分の想定外のことが起こったとき、アクシデントが起こったとき、そのことやその人を責めたり排除したりするのではなく、できる限りの人の考えや感覚の参画をもって、じゃあどうしたらよいか、を考える。それを繰り返していくことで、共同体としてしなやかさを増していくのだなぁと思った場面でした。

そんな積み重ねが詰まったバザールカフェの日替わり料理、ぜひ召し上がってみてくださいね!

狭間明日実

バザールカフェ店員 狭間明日実

バザールカフェ事務局6年目。日々の営みをとおして、場から起こるもの、個人がのびのびと生きることなどを考えています。 傍らで、地域、福祉、食べることにまつわるいろんな仕事や遊びをしています。 同志社大学社会福祉学科卒業。社会福祉士。海が好き。