いわて蔵ビール(岩手県)
Tomato Ale
【山岡さん情報】
フルーツビールの一種として造られてきた、トマトを使ったビール。飲む人に受け入れられない理由がふたつありました。
まず、トマトは好きでも、トマトジュースならではの、火が入ったトマトの風味が苦手な人がいますよね。トマトのビールを造る際にトマトジュースを加えるため、課題になっていました。また、ビールの工程では原材料を加えた後、最終的に煮沸します。煮沸の際に殺菌することで安全な発酵が進むため、加熱処理をなくすことは難しいです。たとえ加熱したジュースではなく生のトマトを使ってビールを造っても、熱の加わったトマトの味になりがちです。
もうひとつは、カクテルのレッドアイと違い、ビールの材料としてトマトを使用すると、トマトらしい鮮烈な赤色を表現できないことです。発酵の途中で、酵母の外側にある細胞壁にトマトの色素が吸着されてしまい、出来上がりの色が薄くなります。
これらの課題を工夫して乗り越えられたのが、北海道の鬼伝説ビールさんです。バジルを加えることで、加熱したトマトの風味をピザのトマトソースのようなものとして感じられるように工夫されています。他にも、新潟ビールさんは「赤くないレッドアイ」というキャッチコピーでトマトのビールを販売されました。見た目は赤くないですが、地元のトマトの特徴がしっかりと感じられるビールになっています。また、加熱時間を短くし、トマトの生っぽさを出しています。
そして今回ご紹介するいわて蔵ビールさんは、地元の農協から仕入れたトマトを自分たちで絞って液体にし、仕込みの釜で麦汁と一緒に加熱しています。地元のトマトは、味・香りが明瞭なままビール造りに使うことができます。実は、10年以上前の試作では色が良くないなどの課題があり、販売までたどり着きませんでしたが、再度の挑戦で2021年から本格的に売り出されました。
トマトのビールに限らず、美味しいフルーツビールを造るのはなかなか難しいです。日本の果物は糖分で評価されることが多いですが、糖分は発酵である程度なくなってしまいます。糖分がなくなった際に、香りや酸味でフルーツをどう表現するか・・・。さらに、ベースになるビールを苦くしたら、苦いのか甘いのかよくわからない味になっていることもありました。そんなフルーツビールやトマトのビールが、長い試行錯誤の期間を経て品質が向上し、定着してきたことを感じます。
いわて蔵ビールHP
https://sekinoichi.co.jp/beer/
【飲んだわたしの感想】
!夏に合うスッキリ感!
私はトマトは好きですが、トマトジュースはあまり好きではありません。「トマトのビールってどんな味なんだろう…」と恐る恐る飲んでみると、その飲みやすさにびっくり!とても美味かったです。炭酸感はあまり強くなく、スッキリごくごく飲めます。トマトの香りや酸味、甘みをほのかに感じました。口に残る程良い苦みも心地良いです。夏らしくさっぱり飲めます。
ビールに合わせる料理は、お米というより、パンやパスタをイメージしました。トマトと相性の良い料理、かつ冷たいお料理に合うのではないかと思います★