第10回

ぼくのおじさん

 

北杜夫 著

 

 

夏休みについて書こうと思っていたこのコラム、あれよあれよという間に9月になってしまいました。京都は未だに蒸し暑さが続き、夏の疲れも出る頃ですが、みなさまお元気ですか?

 

京都の8月といえば地蔵盆。以前住んでいた町内はおそらく西陣でも屈指の子どもが多い町内で、数珠回しの他にもマンションの一階に大きなプールを出したり2階のベランダから子どもたちへのプレゼントをロープで渡して福引きをしたりととても盛り上がりました。

 

現在住んでいる町内は、同じ西陣でも高齢化のためとても静かで小規模な地蔵盆ですが、ここは少し特別なお地蔵さんがあるのと、一年に一度、町内の人たちが顔を合わせてお坊さんの楽しい話に耳を傾ける貴重な機会となっています。場所によっては、お地蔵さんを運んだり、お地蔵さんの顔に色をつけたりなどする町内もあるそうで、地蔵盆のなかった地域出身のわたしにはどれも新鮮です。

 

また今年は、お店のお客さんから地蔵盆にちなんだ珍しいお菓子をいただきました。卍を型押しした、紅白の白雪糕(はくせんこう)というお干菓子。中にあんこが入った少し柔らかめの落雁のようなもので、江戸時代からその記録が残るお菓子だそうです。
今はスナック菓子などが配られることも多い地蔵盆ですが、かつては行事にちなんだお菓子が作られていたそうで、歴史を調べてみると面白いかもしれません。今回は京都の和菓子店に特注で作ってもらったそうです。かなり日持ちするお菓子なので、しばらくわが家のお供えコーナー(亡くなったおばあちゃんの写真や縁起物を飾っています)にお供えして、美味しくいただきたいと思います。

 

さて今回紹介するのは、北杜夫の『ぼくのおじさん』。絶版ではありますが、文庫版は和田誠のなんとも飄々としたおじさんの表紙や挿絵がかわいい。映画化もしているので、知っている方も多いかもしれません。

 

大人から見ると、お金はないけど自由でぐうたらでどこか哲学的なおじさんはなんだかとてもうらやましい。でも、子どもから見るとイライラするくらいにどうしようもなく、他の家の大人のようにもっとしっかりしてほしい。だけどそれでも、いなくなるとやっぱりさみしい。少しテンポのズレた物語を読んでいると、することがなく、暑くて暑くてただただ永遠に続くかのような時間を過ごしていた子どもの頃の夏休みを思い出します。

 

夏休み、親戚やご近所さんなど、ふだん接することの少ない大人と関わった子どもや、遠くに暮らす姪っ子甥っ子と会ったという大人も多いでしょう。子どもから大人まで楽しんでもらえそうな一冊です。

 


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