第3回

レシピ開発の多様性

 

 

− レシピの開発は、どこから始まるのでしょうか。

 

中大路 二人とも別々にレシピを考えるので、やり方は微妙に変わってくると思います。僕の場合は大まかなイメージを最初にします。

 

− どのようなイメージをされるのでしょう。

 

中大路 例えば色だったり、ホップは強い方がいいのか、ない方がいいのか。苦みはどうなのか。あと、使ってみたい原材料から入るときもあります。使ったことのないモルトで、使ってみたい酵母やフルーツで、ビールをつくってみたいっていうところから。大雑把な感じで考えて、そこからだんだんと他を決めていきます。

 

− なるほど、まず大枠を設定して、そこに諸々の要素を加えていくのですね。

林田さんのやり方はどのようなものなのでしょうか。

 

林田 僕は、ここでしかできないものを作りたくて、何か特色を出したいなってことで原材料と自分の気分の掛け合わせで作るっていうパターンがあります。

 

− 気分を掛け合わせるって面白いですね!

 

林田 「室町セゾン」は、僕が好きなセゾンというスタイルと、元々家で味噌を作ったりして麹が身近にあったので、京都の麹を掛け合わせたビールをと。
あとは、こういう人に飲んでもらいたいっていうのを想定して逆算で作ることもありました。「白夜にレモンエール」は20代30代の仕事や子育てに忙しい女性が平日にちょっと飲む想定です。だったら軽いビールで、アルコール何%と決めていきます。

 

− 飲み手とシチュエーションも想定して作っていかれるんですね。それぞれ独自のプロセスがある、というのが興味深いです。

 

林田 思考というか好みも違うので、それを際立たせていくのがうちの特色です。飲んでいただいたらどちらがつくったものか分かると思いますよ。

 

 

− そうなんですね!ちょっと、ヒントを……。

 

林田 僕はホップの華やかな香りの中に飲みやすさを。ちょっと糖分を切ってドライにして飲みやすい感じにしています。

 

− なるほど、味も違ってくる。中大路さんの作るビールはどんな特徴があるんでしょうか。

 

中大路 僕は色んなモルトや酵母を使ってみたいと思ってるんで、酵母の特徴だったり、エステル(酵母の出す香り)を重要視してます。味わい的には結構ボリュームの強いモルティなのが個人的に好きなので、そういうビールを作ってますね。

 

林田 ネーミングも、二人の特徴が出ていて。

 

− あ、ビールの名前でわかるんですか?

 

 

林田 中大路さんが作ったものは英語、僕が作ったものは漢字とカタカナです。

 

− おお、そうなんですね。

お二人で作ってるからこそ、そういう違いが出てくるっていうのは西陣麦酒さんならではで面白いですね。

 

林田 色んなブルワリーがある中で、僕らの特徴は色んな味を同時にここで味わえるということかな。意識してるというよりも、元から二人で作ってる醸造所なんです。最近、老舗のバーのオリジナルビールとしてアンバーエールを作らせてもらった際に、中大路さんの好みのボディの強さと僕の好みのホップの華やかさを掛け合わせたものをつくりたくて、チャレンジしました。

 

− お二人の手法が交わるクリエイティブな環境でビール作りが行われているんですね。

 

林田 それぞれの好みが違うからこそ、一番刺激がもらえる環境だなと思います。