第2回

味の決め手は

 

ー 西陣麦酒さんには定番商品が5種類ありますが、ビールの味に変化をつける決めてはなんでしょうか?

 

中大路 原材料が一番だと思います。 原材料の組み合わせがとても豊かなんです。

 

ー なるほど。ビールの原材料というと……

 

中大路 ベースはモルトと言われる麦を麦芽化したものと、 ホップっていう苦みや香りをつける、 ハーブみたいなものですね。

 

ー あ、聞いたことあります。

 

中大路 あと水と、その材料をお酒に変える酵母っていう微生物。原材料の四つのうち三つが、もうたくさん種類があるので、そこでまず色んな種類のビールが出来ます。さらにここにプラスして材料を入れたらまた種類も増えるんです。

 

 

ー なんだか無限大の可能性を感じますね。

確かに、最近ちょっと変わったビールを見るようになりました。

 

中大路 フルーツ使ったり、熟成させたり。

 

林田 ビールって何千種類とありますけど、全部違うんですよね。

 

ー 麦芽の量でも味は変わるものなんですか?

 

中大路 そうですね、麦芽の量でも変わりますし、麦芽の種類だけでも色々あります。酵素を持った基本となるベースモルトだけでもピルスナーモルトやエールモルト、ミュンヘンモルト、ビエナモルト。

 

ー モルトだけでもそんなに。

 

中大路 色が濃さでもちょっとずつ違っていきます。例えば、カラメルモルトと一概に言われるようなものでもそのカラメル度合いによって味が変わります。チョコレートモルト、ちょっとスモークの香りがついたスモークモルトだったりとか。

 

ー 色の濃さにもグラデーションがあるんですね。

 

中大路 大麦の殻がついてるものとついてないものがあったりもします。殻がついてる分苦みが出て、ない方が苦みが抑えられます。それを組み合わせたりしてビールを作ってます。

 

ー もしかして、西陣麦酒さんの定番商品でも時期によって味が変わったりするんですか?

 

中大路 そうですね、実は地味にちょっとずつ変えてます。発酵温度やモルトの構成比率とか。

 

 

ー 季節の温度の変化によっても変わりますか?

 

中大路 いや、温度はできるだけ調整してます。冬は暖房つけて電気毛布使ったり。

 

ー その調整すごく難しそうですね。

 

中大路 そうですね……。「室町セゾン」は発酵温度が高い方がいいですし、ヴァイツェンだと25℃くらい。エールビールだと18℃から20℃くらい。

 

ー 温度も種類によってそんなに変わるんですね。

 

中大路 スタイルによって出すべき香りが違うんです。高い温度にするとバナナっぽい香りになるし、もう少し低い温度だとクローブみたいな香りが出たり。酵母の特徴もありますし、調整は難しいですね。

 

ー 温度だけで言うと、冬の京都は調整が難しくなるんですね。

ビールの醸造所って色んな場所にあるので、場所による制約ってないんだと思ってました。

 

林田 何にこだわるかによるかもしれません。水にこだわってるところはそれをウリにしてらっしゃいますし。うちは京都市の水道水なんですけど、京都の水は世界最高水準なので。

 

ー おいしいですよね。

 

林田 ただ、軟水なので少し水質調整を行って作ってはいるんですが。

 

 

ー ほんとに色んな工夫がされてるんですね。

この場所でやっていて不便はないですか?

 

林田 もう少し広さがほしいですかね。

 

中大路 それくらいですね。

 

林田 最初に比べて器具も増えて大きくなっていってるので。

 

ー それだけ需要も増えてるということですね。