第1回
ブルワーになりました
―今日はよろしくお願いします。
中大路 よろしくお願いします。
―あ、こちらはビアカップの賞状ですね。
この度はおめでとうございます。
林田 ありがとうございます!ちょうど届いたばかりで。
―このようなコンテストにはよく出品なさるんですか?
林田 そうですね、自分たちの現在地を知るために。一定の水準のものじゃないと表彰いただけないので、自分たちのビールがどのレベルかって知ることができるので。
―西陣麦酒さんは2017年の開業ですよね。
コンテストの中では新人の方なんですかね。
林田 もちろん3年以内にできたところは他にもあって、長く修行されてた方や、ブルワリーで働いてた方が独立されたり色んなパターンがあります。そんな中で僕らは前職の全然関係ない仕事から飛び込んでの3年なので、おそらくまだまだ。
―なるほど。ブルワリーも増えてきてるんですね。
林田 今は日本で500?くらいのクラフトブルワリーがあります。
―そんなにたくさん……!
参考:全国醸造所リスト
お二人とも前職は違う職種だったとのことですが、どのようなことをなさってたんですか?
中大路 僕は営業を10年やってました。
―10年!長いですね。なにか転職のきっかけがあったんですか?
中大路 それまではピルスナーしか飲んだことがなかったんですが、初めてIPAを飲んでこんなビールがあるんやって衝撃を受けたのが一番にあります。そこから興味を持って色々調べていって。ビールは世界で一番種類が多いお酒やったんやとか、一ヶ月くらいで出来るっていうのも面白いな、とか。
―営業からビールの世界に飛び込んで不安はありませんでしたか。
中大路 なかったですねぇ。やりたくて転職したんで。むしろ、色んな事が出来るなって楽しかったです。僕ら素人やからこそ失うもんも何もなくて、あとは勉強してどんどんいいもん作っていくしかないっていう感じやったんで。
―挑戦がしやすい環境だったんですね。
林田さんのきっかけも聞かせていただいてもいいですか?
林田 僕の場合は、金融機関で働いてたんですが、『もやしもん』っていう漫画を読んだことがきっかけで発酵食品に興味を持ち始めて、家で味噌やヨーグルトを作ったりして発酵で何かチャレンジしてみようかなって。そんな時ここの関係者の方が声をかけてくださったんです。
―『もやしもん』がきっかけなんですね。
林田 正確に言うと、奥さんの影響なんです。最初は奥さんの方がビール職人になりたいって言ってて。奥さんがビール職人になるには、自分がビールのことめっちゃ詳しくなったら1つのきっかけになるんちゃうかって思ったんです。それで、奥さんにプレゼントした本を僕が読むようになって、発酵っておもしろいんやなってハマっていきました。
―おもしろいきっかけですね。
お二人とも初心者の状態でどうやって勉強していったんですか?
中大路 僕は、この業界に入る前に一乗寺ブルワリーさんに見学に行って話聞いたり、あと二人とも島根県の石見麦酒さんや広島県の酒類総合研究所に研修に行ったりしました。
―なるほど、専門的に勉強できるところがあるんですね。
中大路 はい、国税庁が主催してるセミナーなんかもありますし、仲のいい先輩ブルワーに聞いたりもします。
林田 ビールの醸造所はあまり垣根がなくて、地域によるかもしれませんが京都は割とゆるやかに繋がってます。ウッドミルブルワリー京都さんには最初のころ樽の洗浄機も貸していただきましたね。
―けっこう交流が盛んなんですね。
林田 だけど、他のところで得た情報をそのまま使えるかっていうと、アレンジや設備によって変わってくるので、うまくいったりいかなかったりを繰り返して今の西陣麦酒のスタイルがつくられてきたっていう。
中大路 設備によってかなり違うので、大きい設備のところのやり方を教わっても自分たちの頭で考えてアレンジをする必要があります。それぞれの醸造所によってベストな方法がありますね。
林田 うんうん。
中大路 一定のセオリーを踏まえつつも、結局は自分でやって確かめて答えを出していかないと。人に言われた通りが必ずしも正しいとは限らないので。
林田 まあ、究極。正解とか完成形とかがないので、どこまでも高みをつくっていけると思っています。