西陣にまつわる
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大成海

綴り手/探り手大成海

2000年広島県広島市生まれ。京都在住。もの書きとデザイン。 本と映画と音楽と酒をこよなく愛す。本屋や出版社などいくつかの場所で働き、稼いだお金は本と映画と音楽と酒に消えてゆく。気の向くままに散文を書いたり、デザインをしてみたり。いつでも大好きな瓶ビールが飲めるようにと、携帯栓抜きを鍵につけて常に持ち歩いている。

連載 FOOD

【おいしい西陣】店主のやる気がなくなる前に。

上七軒の界隈の中、もう少し詳しくいうならば、北野天満宮の目の前の交差点から南東の方へ斜めに伸びる道を下り、しばらくした後、東西にまっすぐの道と交わった点の鋭角にあたる場所に誠養軒はある。中華そばの誠養軒を知ったのはつい最 […]

FOODおいしい西陣西陣グルメ
特集 CULTURE

レコード屋・Second Royal Shop、現る。

  西陣に突如現れたレコード屋   2022年12月、北野商店街の西の端、細い路地をちょいと入った場所に、突如レコード屋さんが現れた。その名も「Second Royal Shop」。「Second R […]

CULTURE
特集 CULTURE

京都から日本へ。クラフトフルーツをお届けします。

  観光地王国・京都の中でも言わずと知れた観光地のひとつである北野天満宮は、年中いつでもあまたの人を集めている。正月には受験生を、春には満開の梅を、秋にはライトアップされた紅葉を、夏は特にイベントごとは思い浮か […]

CULTUREカフェクラウドファンディングコンフィチュールフルーツ西陣
連載 FOOD

【おいしい西陣】「ちょうどよい」喫茶店

「ちょうどよい」喫茶店   喫茶店のドアを開けると、「この間、来てくれたね」とママさんが出迎えてくれる。KéFUから北東の方向に歩いて約5分。家と家の間にひっそりと佇む“喫茶 杉”が見えてくる。装いは煉瓦造り、 […]

FOODおいしい西陣喫茶店喫茶杉西陣グルメ
特集 EVENT

NEMURU KYOTO BOOKFAIR⑥

308 LAWN TEXT     今回の出店者の中で最も遠方からの参加は、仙台から来られたLAWN TEXTさんである。動物をモチーフに、やわらかい布でつくられたポシェットやスタイ(よだれかけ)など […]

EVENTNEMURU KYOTO BOOKFAIRブックフェア西陣
特集 EVENT

NEMURU KYOTO BOOKFAIR⑤

305 YUY BOOKS / DOOKS   赤・緑・黄と色鮮やかな本たちが自身の存在感を放ちながら、規則正しく横たわっている305号室は、静かな雰囲気に包まれていながら、視覚的にはとても賑やかだ。外国の雑誌 […]

EVENTNEMURU KYOTO BOOKFAIRブックフェア西陣
特集 EVENT

NEMURU KYOTO BOOKFAIR④

207 well   207号室のお部屋には、ベッドが3つある。その3つのベッドや壁には所狭しと本やポスター、洋服などが並べられている。それらのソフィスティケートされたプロダクトは、KéFUの白い空間にほどよく […]

EVENTアーティストブックフェア西陣
特集 EVENT

NEMURU KYOTO BOOKFAIR③

  204 へきち   イラストレーターとグラフィックデザイナーのコンビネーションでアートブックをクリエイトするのはへきちさん。204号室に入るなり、おいしそうな本がぼくの目に止まった。『Pâtiss […]

EVENTアーティストブックフェア西陣
特集 EVENT

NEMURU KYOTO BOOKFAIR②

201 sakumotto ,Inc.   いびきが聞こえる。どこかの部屋から、誰かのいびきが漏れ出ている。空には太陽が高く昇り、町では人が忙しく動き、KéFUではブックフェアが行われている。そんな中で「大いび […]

EVENTアーティストブックフェア西陣
特集 EVENT

NEMURU KYOTO BOOKFAIR①

lounge 恵文社 一乗寺店   「恵文社 一乗寺店」という本屋を初めて訪れたのはいつだっただろうか。確か、あれは僕が大学1年生の時のことだから、今から3年以上も前のことだ。もう50年近く営業している恵文社か […]

EVENTアーティストブックフェア西陣
2022.12.30
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KéFUで作った新聞をポスティングするために町を歩き回っていると、いろんな家の玄関先までお邪魔する機会がある。実に様々な家庭用ポストがあるものだ。壁にめり込んでいるもの、木箱をそのまま壁に取り付けたもの、ちょっぴりエレガントなもの、「チラシの投函お断り」と書かれたもの、一方で「いつも配達ご苦労様です」と書かれたもの……と様々なポストがある。僕はできるだけ存在感を出さぬよう、申し訳なさそうに、何者でもない誰かになりきり、知らない人の敷地に忍び入り、そっと出てゆく。ひたすらこの行為を繰り返して町を練り歩いていくわけなのだが、ひょんな時にどうでもよい発見があったりする。

とある好好爺は、野良猫とカラスに餌を与えながら庭仕事をしていた。猫とカラス。例え桃太郎の家来にしても、鬼ヶ島へ行く途中で逃げられそうな両者を手懐けている好好爺は、一体どんな団子を与えているのだろうかと気になる。が、僕がその家のポストに忍び寄るとカラスと野良猫はそそくさとどこかへ退散してしまった。それでも好好爺はなにも構わず庭仕事を続けている。道ゆく人々に誇れる玄関を作るんだぜと言わんばかりに、黙々と葉っぱに触れ続けている。自らの家の中の家具や雑貨を道ゆく人に見せつけるため、カーテンを取り付けない北欧人と同じような思想を持っている好好爺の小さな路上庭園が一体どこにあったのか、今ではよく思い出せない。

2022.10.03
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ジョッキに注がれた生ビールをゴクリゴクリと流し込んでいると、「あぁ、夏だ」と感じる。あるいは、夏が来たと感じているから、生ビールをゴクリゴクリとしたくなるのかもしれない。卵が先か、鶏が先か。生ビールが先か、夏が先か。

瓶に入っているビールをグラスに注ぎ、しっぽりとやっていると、「あぁ、秋だ」と感じる。あるいは、秋が来たと感じているから、瓶のビールでしっぽりとやりたくなるのかもしれない。卵が先か、鶏が先か。瓶ビールが先か、秋が先か。

僕は瓶ビールでしっぽりとやるのが特に好きで、テーブルを囲む人たちで少しずつ瓶の中身を分けていく手間がなんとも愛おしい。上司と部下でビールを注ぎあったりなどのコミュニケーションは面倒くさいけれど。「同じ釜の飯」のように、「同じ瓶のビール」という言葉があってもいいような気がする。気のしれた友人と注ぎあったりするのも妙に楽しかったりする。

瓶の中のビールを、一滴でも多く飲んでやりたいと思って、虎視淡々と瓶ビールを狙っているから、必然的にグラスの中身が減るスピードは速くなり、注ぐ回数も多くなる。Sapporoの瓶ビールを箱で手に入れて、上から眺めるとたくさん星があったりするから、なんだかプラネタリウムみたいでロマンチックだ。

僕はいつどこで瓶ビールが飲みたくなっても安心できるように、小さめの栓抜きをいつも携帯している。それほどに、僕は瓶麦酒至上主義者なのである。

2022.07.16
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とある日、KéFUにて夜ご飯に何を食べようかと悩んでいた。キッチンパパに行こうか、中立売まで下って王将に行こうか……と話していると、眼鏡をかけた坊主の知人が”とんが”というとんかつ屋に行ってosanoteでコラムを書けと言うので、仕方がないなと思いつつも、僕も少しだけ気になっていたし、まぁビールが飲めるならそれで満足だった。

KéFUから程なく歩いた場所に”とんが”はあり、とんかつを中心にお肉の料理がメニューに並んでいる。店に入り、メニューを見るなり僕は唸る。とりあえず瓶ビールをいただくのは大前提として、どれも美味しそうなので、欲を言うならば全てのメニューを一度に注文したい。もちろん、胃袋も財布もそのような貴族的な暴挙は許してはくれぬから、どれかひとつに決めねばならない。とんかつ屋でとんかつを頼むのは、とんかつ屋の思うツボだと考えた僕は、ミンチカツの定食を注文し、瓶ビールをしっぽりやりながら定食が出てくるのを待つ。

出てきたお皿にはミンチカツがいくつか乗っており、食事はまず野菜からとしつけられている僕はサラダをすべて平げ、箸でミンチカツを分けながらお肉を噛み締めてゆく。それにしても、ビールはあまたの料理と相性が良いと有名だが、僕が思うに、お肉料理との相性は格別である。こんがりとした狐色に黄金の液体が並ぶと、人間の食欲に抵抗の余地はない。そうして、お肉とビールのマリアージュを心から祝福しているうちに、瓶の中も皿の上もきれいになっていた。

2022.05.02
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二度と行けないあの店で:西陣亭

人間には大きく分けて2種類あると聞くが、僕は、いわゆる「町中華」と呼ばれる中華を好む種類の人間であるようだ。満漢全席のような高級中華でもなく、香辛料がふんだんに使われるいかにも本格的な中華でもない。おじいちゃんが1人でフライパンを振っている中華だ。まさに日本的な味付けがなされている中華屋で2〜3品の料理と瓶ビールをいただく。これぞ「町中華」を堪能する極意なのである。

今出川通りから智恵光院通りを南下していると、左手の方に、伝説の中華屋があった痕跡が見えてくる。その名も「西陣亭」。日に焼け薄れてしまった黄色いひさし(キノピーというらしい)にしっかりと赤い文字で店名が記された西陣亭。多くを語らないそのたたずまいこそ、誰もが憧れる中華の名店の姿そのものだ。

しかし、僕が西陣亭の存在を知ったのは、亭主が老齢のため閉店となった後だった。僕は西陣亭の歴史の痕跡を眺めることしかできない。店内に満ちたニンニクの香り、フラパンの上で食材が踊る音、グラスに注がれた黄金の酒に浮かぶ白い泡、炒められた米たちのツヤ、常連客たちが交わすどうでもいい会話。これらの小さな幸せを、僕は味わうことができない。

人間には必ず終わりがあるように、永遠に続くお店はない。明日、大好きなお店に行ってみると、そのお店はなくなっているかもしれない。だからこそ僕は、幸せを受け取ることができる間に、大好きなあのお店へ二度と行けなくなる前に、お店を、人を、京都をたくさん愛さねばならない。