観光地王国・京都の中でも言わずと知れた観光地のひとつである北野天満宮は、年中いつでもあまたの人を集めている。正月には受験生を、春には満開の梅を、秋にはライトアップされた紅葉を、夏は特にイベントごとは思い浮かばないけれど、なんだかんだでいろんな人が訪れていると思う。そんな北野天満宮のお向かい、南北に伸びる路地に「北野ラボ」はある。赤を基調とした入り口からお店の中に入れば、壁にずらりと並ぶコンフィチュールの瓶たち。その壁には巧みな照明が施されているのだろうか、コンフィチュールたちが自ずと光を放っているようにも見える。テーブル席がいくつかと、カウンター席には色とりどりの、イームズを思わせる椅子たち。ここに老若男女が座り、コンフィチュールがふんだんに使われたパフェを食べるなどするのだろう。

 

 

先ほどからコンフィチュール、コンフィチュールと言っているが、コンフィチュールというのは、ある種のジャムの仲間である。果物と砂糖を煮詰めて作るという点でも、それぞれの果物独自の色をしていて、かつトロリとしているという点でも、ジャムとそう違わないコンフィチュール。そのコンフィチュールの特徴はというと、果実が残っているという点である。そもそも、“コンフィ”というのはフランス料理の調理法のひとつであり、そう聞けばピント来る人もいるのではないかと思う。ちなみにコンフィの食材は肉や果物であることが多く、肉には油を、果物には砂糖を用いることで、保存性が高まるだけでなく、味が濃縮され風味も豊かになると、北野ラボのパティシエ・吉水さんは言う。

 

実際に、僕はオレンジ・イチジクとホワイトチョコレート・はちみつレモンという3種類のコンフィチュールをいただいたのだけれど、小さじ一杯分ほどの料でも食パンを1枚平らげられるのではないかというほど、味がキリッと凛々しく、堂々としていた。こんなことなら、お店で売れ残ったり、買いすぎてしまった果物は全てコンフィチュールにしてしまえばいいのにと思うのだけれど、なかなかそうも上手くはいかないらしく、そこに吉水さんが北野ラボというコンフィチュールのお店をはじめた理由があった。

 

現在日本で栽培されている果物のほとんどは、そのまま果物として食べるための果物だという。土地が少なく、季節が1年で4回も変わってしまう日本では、生産できる果物の量が限られ、生産量の面ではヨーロッパ諸国やアメリカに劣ってしまう。そこで、果物ひとつひとつの質を高める栽培を追求した結果、ぼくたちは、甘く、大きく、食べやすい果物を食べることができている。が、より甘く、大きく、食べやすくなっていけば果物の価格が高騰する。それだけでなく、そのように育てられた果物は加工に弱いのだという。例えば、生で食べればおいしい真っ赤な苺でも、火を通せばあっという間に茶色く変色してしまうし、大きな桃でも、加工のために潰せば何を食べているのかよくわからない味になってしまう。そして、お酒のリキュールや化学物質を加えることで味を整え、全く違う製品にされてしまう。そんな現状があるのだそうだ。

 

そこで、加工に適した果物、人呼んで「クラフトフルーツ」をより多くの人に知らせるべく、吉水さんはそれまでケーキ屋をしていた岡山は倉敷から京都へやってきて、現在北野ラボを経営されているというわけだ。お母さんが食後に皮を剥いて出してくれるだけで美味しく食べられる果物と、丸かじりはできないけれど、火を通されるなどの加工を経て本領を発揮する果物、どちらも存在するべきだ。育てる過程で傷がついたり、綺麗な形に育たなかったりという、いわゆる“欠陥品”を加工用に用いるのではなく、予め加工に適したスペシャルなクラフトフルーツを育てようと、吉水さんは日本津々浦々の農家さんに会いに行き、数年後を見据え、植える果実の品種を農家さんと一緒に考えるという活動もされているそうだ。

 

「京都はものづくり、クラフトの町だと思っています。僕がクラフトフルーツの存在を広めることでそこに価値が生まれます。フルーツを植えるところから携わり、作家さんに届ける仕事をすることで、クラフトフルーツはクラフトビールに、コンフィチュールに、ケーキになることができるんです」と吉水さん。

 

 

さて、そんな北野ラボさんは現在クラウドファンディングに挑戦中。「みんな違って当たり前。ヒトも、フルーツも」というキャッチコピーを掲げ、クラフトフルーツの存在を1人でも多くの人に広めることで、日本全国の農園を応援したいという思いから、今回のクラウドファンディングに挑戦することを決めたそう。リターンには北野ラボさんのコンフィチュールなどが並んでいる。ということで、みなさま、どうかチェックを。

 

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