箕面ビール(大阪府)

国産桃ヴァイツェン

 

 

【山岡さん情報】

 

入荷した当日にほぼ売り切れてしまう、箕面ビールの国産桃ヴァイツェン。その人気は、公式オンラインストアで販売開始時間に待ち構えていても、手に入らないほどです。

 

 

80~90年代にかけて地元の果物を使ったワインづくりのブームがあり、地ビール業界でも90年代末から地元の果物を使用する動きが盛んになりました。桃は酸味が強くなく、ビールづくりに使用した際に果物の特徴を出すのが難しいです。初期の桃のビールは香料を使用することで桃らしさを表現していましたが、香料を使わず果汁の持ち味を活かしたビールでヒットしたのが箕面ビールの国産桃ヴァイツェンでした。

 

 

こちらのビールはひとつのシーズンで4回にわたって販売されており、早生、白鳳、清水、川中島白桃の順番で毎回品種が異なります。早生は酸味があり香りが控えめで、後半の時期になるにつれ、香りと甘さが強くなっていきます。品種によって味わいが異なるため、購入するタイミングによって好みが分かれる人もいるほど。

 

 

箕面ビールの国産桃ヴァイツェン以降は、より濃厚な味わいの桃のビールが各メーカーから販売されており、それぞれのこだわりが感じられます。サンクトガーレンの7種の桃のエールは、濃厚な甘さもありながら、桃の種まわりの酸味や渋みもあえて残すことで桃らしさを表現されています。

 

 

今のところ、ビールづくりにあまり使われていない果物は意外にも多くあります。カキ、イチジク、ビワなど……。一部で使われているものの、まだ大きなヒットにはなっていません。果物の価格や技術の問題で難しいポイントがある中で、桃の場合は箕面ビールのヒット作により風向きが変わりました。今は使いこなせていない果物も、今後美味しいフルーツビールになっているかもしれません。箕面ビールの国産桃ヴァイツェンは、そんな可能性を感じさせてくれる商品でした。

 

 

箕面ビール
https://www.minoh-beer.jp/
サンクトガーレン
https://www.sanktgallenbrewery.com/

湘南ビール
https://www.kumazawa.jp/sake-beer/shonan-beer/

Y.MARKET BREWING
https://craftbeer.nagoya/

 

 

【飲んだ感想】

 

 

箕面ビールの「国産桃ヴァイツェン(川中島ver.)」のラベルには、桃の形に頬を赤らめた猿が描かれている。桃の形に頬を赤らめた猿が描かれているのは、箕面は猿が名物であるからだと山岡さんはいう。その言葉を思い出しながらラベルに描かれた猿を一瞥し、瓶の蓋をあけ、いい塩梅で泡が作られるよう慎重に注ぐ。香りはクラフトビールらしい甘い香り。箕面ビールの「国産桃ヴァイツェン」は桃を使ったクラフトビールブームの先駆けであるというので、早速お手並を拝見しようと飲んでみる。桃とビールのバランス感が絶妙だ。舌あたりが滑らかで、桃の甘い香りを感じさせながらも、ビールらしい旨みを持っている。本来なら違う枠組みで語られる桃とビールという異質な2人が出会い、わかりあい、許しあっている。絶対に交わることのない2人が分かり合ったときに物語が感動を生むように、桃とビールの調和が飲む者に感動を与えるのである。夕方にベランダでビールを飲みながら文学を読みたいあなたに是非とも飲んでいただきたい。

 

 

サンクトガーレンの「7種の桃のエール」(上記画像・左から2番目)のラベルにはそそられる。色味の強いピンクの背景に、お尻のようで桃のような、プリップリのお尻が浮かんでいる。ポップなヒップが印象的なこのビールの香りは完全に桃だ。桃と「7種の桃のエール」を交互に嗅いでみたら、どちらがどちらかわからなくなるくらい、本当に桃だ。アルコール感と桃の果実感が強く、なんだか大人のデザートみたい。カクテルが好きな女性におすすめの1本だ。

 

一方、ラベルに桃が大きくプリントされた湘南ビールの「PEACH ALE」(上記画像・左から3番目)は、苦味やアルコール感が少ない。香りはフルーティーで、華やかで明るい、お花畑で飲んでみたい1本だ。クラフトビールには興味があるけれど、ビールは苦いからちょっと苦手なの。そんなふうに思ってなかなかビールを飲めない人でもサラッと桃の味わいを感じながらゴクリとひと口飲んでみれば、あっという間にゴクリゴクリと飲み干してしまうだろう。

 

最後はY.MARKET BREWINGの「新・桃の惑星4」(上記画像・右端)。こちらは缶に入っている。IPAであるのにIBUが低いということは、どうやらホップをたくさん使うことでフルーティな香りを強調しつつ、苦味を最小限に抑えているらしい。そう聞いていたけれど、こちらは桃の甘い香りと、ビール好きはグラスを持つ手が止まらなくなりそうなほどコクのあるビールの味わいがうまく調和しており、いちばんビールらしい味わいだったように感じた。ビールに夢中になっているあなたは、きっと「桃の惑星」にも夢中になってしまうことだろう。

 

4種類のビールを飲み比べた。桃という同じ果物を使っているのに、使う品種やブルワリー、製造方法が違うと、香りや味わいには大きな差が生まれる。これぞクラフトビールの醍醐味だ。普段、中瓶を4本空けることはあっても、4種類のビールを飲み比べることはない。クラフトビールの飲み比べほど大人で贅沢な時間の使い方はないんじゃないかな。