新しい相棒と

 

 

2023年4月、20年間の人生ではじめて自分で自転車を購入した。自分の中ではとても大きな買いもので、これからの京都生活にたくさんの彩りをもたらしてくれるだろう。自転車が自分のもとへ来てからはというと、雨の日以外は毎日、京都のまちを走っている。この日ははじめて自転車で西陣を訪れた。ル・プチメックの赤い店の前に置く新品のマイ自転車にはまだ見慣れない特別な感じがした。

 

2023年4月のパンは、ミルクフランスとミルクフランス・ラムレーズンである。今回紹介するこれらのパンはル・プチメック創業25周年商品の第2弾だ。片手で持ちやすいフォルムをしたこれらのパンは、まさにサイクリング中にちょこっと食べるのにぴったりのパンである。通常、今出川店ではクルミパンのラムレーズンミルクフランスを販売しているが、こちらも食べたことがなかったので食感の違いを食べ比べてみた。

 

 

 

〈ミルクフランス〉

まるでバターをそのまま食べているかのように滑らかな自家製ミルククリームは、とても甘くもちっとした生地によく合う。このもちっとした生地はフランス生地と言うそうだが、フランスのパン生地のイメージはハードなものであったため、すこし驚いた。しかしよく調べてみると、日本においては「もちもちした食感」のパンが好まれるため、本家のフランスパンより弾力の強いものとなっているそうだ。フランス本場のミルクフランスをいつか食してみたい。

 

〈ミルクフランス・ラムレーズン〉

ラム酒に漬け込んだ2種のレーズンと自家製ミルククリームのコンビネーションは、プレーン味とはまったく異なる仕上がりとなっていた。ラム酒の芳醇な香りが甘い練乳バターとマッチし、滑らかさのなかにしっとりさをプラスし、深みの味わいを感じる魅力的なものへとなった。このレーズンはみんなが好きなレーズンの味がして、食感と相俟って味のアクセントとなる。噛むたびに口の中ではじけるレーズンミルクフランスは、おいしい〜と思わず笑顔になるパンであった。

 

 

Le petit Mec今出川店から北に約200mほど進んだところに東西に走る細い路地がある。昔ながらの住居がひっそりと佇み、風情あるレトロな通りである。この通りを“紋屋図子”というそうだ。

 

 

京都では小さな生活道路を「図子」や「路地(ろーじ)」と使い分け、袋小路が「路地」、通り抜けているのを「図子」と呼ぶらしい。なんだか昔っぽい呼び方だ。紋屋は平安時代、宮中に納める織物の扱いを取り仕切っていた織元である御寮織物司のことである。さすが西陣。当時の西陣の人々がこの道を大切にしていたことが名称から伝わってくる。産業の衰退に伴い、町家も少なくなったそうだが、かつて西陣織の職人を住まわせていた長屋が紋屋図子の真ん中、北に細くのびる形で今なお残っている。この路地は三上家路地と呼ばれ、昔ながらの西陣の雰囲気を感じることができる。

 

 

細い路地のなかに何軒か表札がたっており、現在もここで暮らしている人がいることが伺える。日々の生活音が隣に丸聞こえなんてこともありそうだ。扉を開けるとお向かいさんと出会したりすることもあるのかな。奥ゆかしい趣のある暮らしがここではできそうだ。三上家路地は、テレビドラマや映画の撮影に使われることもあり、観光目当てに訪れる人も多い。生活の一部の道が観光スポットとして知られていくなんて素敵だなと感じながら再び自転車をこいだ。

 

 

三上家路地から少し行った先の公園で牡丹桜を見つけた。牡丹桜の花言葉は「しとやか」だそうだ。たくさんの花びらがこれまで積み重ねてきた知恵や経験を意味し、豪華に咲きながらも上品で、最後には花びらが散ることから潔さと奥ゆかしさを表しているのだ。歴史ある西陣のまちと重なった。そんな西陣のまちで誕生して25年の月日が経ったル・プチメック。西陣の歴史に比べるととても短いが、きっと25年後には乗れなくなっているであろう私の新品の自転車と比べると、ル・プチメックのたどってきた道はとても長い。25年もの間、人々にトキメキを与えてきたパンの数々。来月はどんなパンが私を楽しませてくれるのだろう。新しい相棒と走る楽しみがまたひとつ増えた。