日常に植物があるということ

 

 

町家で暮らしはじめて1年とちょっと。全ての四季をここで過ごした。
京都らしい夏の蒸し暑さと冬の冷たさを一身に受けながら、自分の身体が少しずつ町家に馴染んでいくのが心地よい。襖が少し開けにくかったり階段の急勾配など多少不便なこともあるが、現代の便利すぎる生活の中では手間のかかることが愛おしく感じることもある。

 

せっかく自由に改装できる町家に住んでいるのでなにか手をかけたいと思い、壁に白い漆喰を塗ったのは最近のことだ。光の入らない1階の部屋が明るくなった。つぎは全体的に植物で華やかさをプラスしたい。ネットで購入してもいいのだが、自分の部屋に置く植物は実際に手にとってお迎えしたいもの。近所の【花屋にち】へ相談に伺うことにした。

 

 

【花屋にち】は旧西陣小学校から猪熊通りを南に下ったところにある。家からは徒歩圏内なので散歩がてら歩いて行くと、古民家の前に並んださまざまな植物が私を出迎えてくれた。濃い緑、白っぽい緑、大きな葉っぱ、上からぶらさがっているもの。自分の家を思い浮かべながら植物を眺める。お店の中から店主が出てきて話しかけてくれた。「屋外で日当たりの悪い場所でも育てられるものと室内に合うもの」というリクエストにあれはこれはと勧めてくれる。

 

「外で育てるならこの辺かな」といくつか見せてくれた中に小さな丸い葉っぱがかわいい植物があった。「ワイヤープランツ」というらしい。ワイヤーのように細長い茎に小さな葉っぱがたくさん付いている。寒さにも割と強く冬でも緑を絶やさないらしい。水をあげるタイミングだけが難しいが「今の季節だったら3日に1回くらいがいいよ」と教えてくれた。冬にも枯れないことに魅力を感じてワイヤープランツを持って帰ることにした。自分の鉢を持っていたので植え替えてもらう。

 

▲植え替えは土代をプラスするとやってくれる。

 

店内に入るとドライフラワーもたくさん置いてあった。素朴なドライフラワーの色味が古民家に合っている。店内に置いてあった青い鉢の植物が目に止まった。「コウモリラン」だ。葉っぱの形が特徴的で、置いているだけでかっこいいインテリアになりそうだ。樹木に着生するほど丈夫な植物らしく、熱帯地域で自生しているものなのだが直射日光は苦手らしい。きれいな青い鉢もセットになっているということでコウモリランも購入することにした。

 


▲かわいい鉢も一緒に購入できるので、そのまま家に置けるのがいい。

 

いつもは店主の奥さまが作った焼き菓子も店内で販売しているのだが、この日はお休みだった。乳製品や卵を使わない植物性のお菓子でやさしく美味しい。一つひとつのお菓子のパッケージに言葉が書かれていて、それを読むのも楽しみだったりする。今回はお菓子に出会えなくて残念だがまた近々来ることにしよう。

 

さて、ワイヤープランツの植え替えも終わり、購入した植物を抱え帰路につく。「なにかあったらいつでも相談してください」という言葉が嬉しい。

 


▲ワイヤープランツは以前から置いている植物の横に。

 


▲コウモリランは2階の光が入るところに。

 

植物が増えただけで部屋が明るくなる。朝の水やりは手間がかかるけれど、少し不便な町家生活に愛おしさが増した。次は窓にかける植物を探そうかな。店主のお言葉に甘えて、また相談に行くことにしよう。