町の写真を撮ろうと思えば、なによりも町を歩くことだ。乗り物に乗っているよりも、ゆったりと歩いている方が、ときめく瞬間を漏らすことなく拾うことができるだろうし、ときめいた瞬間にすぐに立ち止まってカメラを構えることができる。

 

そういう意味では、「フォトウォーク」はものすごく合理的なお散歩撮影会だ。KéFU stay&loungeでは春と秋に「フォトウォーク」を行っている。写真を撮ることが好きな人たちが集まり、西陣の町を悠々と散歩しながら、それぞれが思い思いにカメラを構える。講師であるフォトグラファー・岡安いつ美さんと一緒に歩くから、写真を撮りたいけれどカメラの操作に慣れていないという人でも、写真家にでもなったような気分で町を歩くことができる。

 

ぼくがフォトウォークに写真家の仁科勝介さん(あだ名はかつおさん)をお呼びしたいと思ったのは、かつおさんが西陣の町を撮っている姿を見てみたかったからだ。大学時代には、スーパーカブに乗って日本全国の市町村を旅しながら写真を撮ったというかつおさんは西陣の町をどのように撮るのか、自分の足を使って日本中を旅したかつおさんは、どのように西陣を歩くのか、とても知りたかった。そういうわけで、2022年秋のフォトウォークは、講師の岡安さんだけでなく、特別ゲストとしてかつおさんに参加していただいたというわけだ。

 

10月2日。まだ歩くと少し汗ばむくらい暑くてよく晴れたお昼過ぎに、15人ほどのフォトウォーク一行はKéFUを出発し、細い路地をクネクネと、歩いては止まって撮り、また歩き出しては止まって撮りながら、北野天満宮を目指して西へと進んでいった。みな歩くペースはバラバラで撮りたいと思うものもバラバラだ。

 

カメラを持つと歩き方が変わることがわかる。普段いかに足下へ視線を向けていないかがよくわかる。日常で歩くよりもゆっくりのペースで進んでゆき、なんでもない壁や空き地の前に立ち止まってカメラを構えてみたりする。お菓子の包装紙の裏側に書いてある説明書(原材料や製造元などが書かれたやつ)をよく読んでみると意外と面白かったりするように、なんでもないように見える場所の前でカメラを構えてみると、足下にいくらでも転がっている「素敵」を見つけることができる。忙しい日常の中でも、カメラを持つだけで、足下に無数に転がっている「素敵」を見つけられるようになるらしい。

 

その日、北野天満宮では「ずいき祭り」とやらを開催していたらしく、屋台が並んでいて、人がたくさんいたりすると写真を撮るのがもっと面白くなるだろうと思っていたのだけれど、そこに屋台の姿はなく、いつもの北野天満宮があるだけだった。それでも、数時間前に出会ったばかりの人たちが、みんなでお互いの写真を見せあったり、おみくじを引いてみたり、おみくじを引く姿にカメラを向けてみたりしていて、なんだか温い気がしたのは、きっと、気温が高かったせいではないだろう。

 

通りのそばの壁や空き地、看板や暖簾、路地に降り注ぐ光や影は、僕たちフォトウォーク一行に撮ってもらうためにそこに立ちすくんでいるかのようで、フォトウォークに参加してくれた人たちが、その壁や空き地、看板や暖簾、路地に降り注ぐ光や影にときめいたという。ここだけの話、ぼくは久々に持ち出したフィルムカメラを構えることも忘れて、西陣にときめくみんなにときめいていた。

 


参加者のフォトギャラリー

Ayako Sato

 

Katsuo Nishina

 

Tomoki Torobu