煌めく時間のお供

 

秋。わたしが1番好きな季節。

肌寒い日々とは反対に、温もりがいっぱいの色で京都の街が染まるからだ。

橙色、黄色、茶色、赤…。そんな季節にぴったりの食べ物は何かと聞かれたら、迷わず「パン!!」と答えるのは私だけだろうか。黄色×茶色、赤×茶色、うん、どれもパンを掲げて写真を撮りたくなる色の組み合わせだ。

今月も、プチメックのパンを片手に、秋色の西陣をお散歩しよう。

 

 

 

 

情熱的な赤よりも、靄がかかったような淡い空に調和する黄色の葉っぱに秋らしさを感じる。

黄色の葉っぱといえば、銀杏の木。京都で銀杏の木といえば、堀川通りの銀杏並木。この銀杏並木は、堀川今出川から堀川紫明辺りまで続く。連なる銀杏の木が、まさに黄色のカラーコーンとなり、約1kmも秋の京都を誘導してくれる。

私にとっては通学路でもあるこの道。だからこそ、ずっとこの銀杏の見頃に対して疑問を抱いている。秋になると2日に1回は目にしているにも関わらず、いまだに「今が見頃だ!写真に収めなければ!」と一度も思ったことがない。毎年、「まだ一番綺麗な時ではないだろう」「あと少し待てば、銀杏のベストショットを撮ってあげることができる」と思っていると、いつの間にか銀杏の絨毯ができている。

そこで、今年は、ある人の助言のもと、堀川通りを通るたびに銀杏並木の写真を撮ってみることにした。飽き性の私が続くはずもなく、結局3枚しか撮っていない。しかし、西陣という範囲が曖昧であり、自分自身が西陣だと思えば“西陣”になってしまうように、自分が見頃だと思えば“見頃”にしてしまうことにした。私が定義してしまった銀杏の“見頃”は、見上げても見下げても、一面に黄色が煌めいているとき。つまり、銀杏の“見頃”とは、銀杏の葉が完全には落ちず、しかし、少し落ちた銀杏の葉で絨毯が出来上がっており、木と絨毯の間にいる私たち自身も煌めく「何か」を持っているときである。そう、銀杏の“見頃”は3つも条件が揃わないといけない。非常に難しいタイミングなのである。

 

 

そんな条件の1つ、私たち自身も煌めく「何か」を持っていること。それは、自身が好きな食べ物であれば全て当てはまるのではないだろか。私にとっての「何か」は、もちろん「プチメックのパン」である。銀杏並木を“見頃”にしてくれるプチメックのパンは、「アマンドショコラバケット」と、「ゆずと栗のパン」。

 

 

 

「アマンドショコラバケット」は、創業25周年の記念として発売されたバケットを使った一品。プチメックのバケットは、シンプルだからこそ、創業者のこだわりが詰まった看板商品である。別名48時間バゲットとも呼ばれる商品。創業者である西山氏は当時バゲットを作っては食べ、作っては食べを繰り返し現在の配合に辿り着いたそう。48時間寝かせ長時間発酵することにより皮のパリパリ感や旨みを最大限に引き出すことに成功。「美味しいものを食べてもらいたい」という創業者の想いが詰まったバゲットとなっている。

「アマンドショコラバケット」は、ローストした砕いたアーモンドとチョコレートを中に入れて焼いたバケット。先っぽから食べ始めると、パリッ、カリッとパンらしい音が聞こえてくる。食べ進めていくと、甘すぎないビターな味わいのチョコと、香ばしいアーモンドのご登場。チョコとアーモンドを一緒に噛み締めたときの高尚な味わいがたまらない。歯応えのある食感と、噛めば噛むほど全てが調和する美味しさ。夢中で、ぺろりと完食。

 

 

 

続いて紹介するのは、「ゆずと栗のパン」。こちらは、プチメックの定番商品でもあり、私がプチメックのパンで最も好きなパンでもある。今年の1月から始まったこの連載。早いもので、私が文章と写真を担当する最後の回である。この「ゆずと栗のパン」を紹介しなければ、この連載を終わらせることはできないと初めから考えていた。やっとこの日が来たことが嬉しいような、寂しいような。

この「ゆずと栗のパン」は、外はカリッと、なかはフワッとした食感のパンに、ゆずのピールと栗がごろっと入っている。偶然にも、黄金に輝くゆずが、銀杏の色にぴったりだ。手元に煌めく「何か」とは、まさにこのパンなのかもしれない。栗のほどよい甘さが口いっぱいに広がると同時に、ゆずの爽やかな香りがアクセントとなって旨みが増す。

 

 

パンって美味しくて、人を幸せにしてくれる食べ物だと改めて実感させてくれた連載。また、そんなパンの中でも、プチメックのパンは、ひとつひとつの素材と工程にこだわりがあり、噛めば噛むほど調和していく味わいが魅力的であった。まさに、「これぞ、パン」。そう思わせてくれる。そして、西陣には、まだまだ紹介しきれていないほど、魅力的な場所があることに気付かされた。それは、普段何気なく見ている景色や建物も、パンを片手に持っていれば“トキメック”ものに変わるからである。

“トキメック”パンとは、日常の瞬間を特別な時間に変えてくれるパンのことではないだろうか。