第1回
お野菜という選択
―こんにちは。
営業中にお邪魔させていただきすみません。
いえいえ、どうぞ。
―すごい、素敵なお店ですね。
ありがとうございます。
町家の玄関スペースをお店にしました。
―前にいただいた赤カブとわさび菜。
もう、めちゃくちゃ美味しかったです。
あ、ほんとですか。良かったです。
―わさび菜って味が全然違うんですね。
生で食べたのと、茹でたのとでは。
そう、不思議ですよね。
茹でるとちょっとほろ苦くなって。
―噛めばちょっと、染みわたるような。
ハマりました?
―はい、ほんとに感動しました。
こんな美味しいお野菜を家で食べられるなんて、って贅沢な気分になって。
良かったです。
―角谷さんは、大学では建築を学んでいたとお聞きしました。
実は僕も大学の建築学部で、今三回生なんです。
三回生ということはもう設計をやっておられたりするんですか?
―そうですね。
一回生の時から先生に見てもらいながら設計はしてたんですが、三回生になって僕は都市の研究室にいって、京都を広く見るようなことをしてるんです。
だから宿泊施設で働いておられるんですね。
私もそんな感じでした。
設計するというよりも実践の場が見たくて、その建物の中で何をするのか、どうしたら人が集まるか、中身をつくる方に興味がありました。
―中身ですか。
はい、企画やイベントをやりたくて。
大学二回生のときに、ご縁のあった方から「音楽事務所の裏方やったらどうや?」と誘っていただいて、弟子入りしたんです。
―どうして音楽事務所だったんですか?
最初は自分が舞台に出る側で音楽を習っていたんです。
でも、学問だけではわからない裏方のいろんな実務の中で、人間関係や企画の進め方などの要素を学んでみたい、と思って。
―音楽活動の経験はいかがでしたか?
そこで見たものは大きかったなと思います。
研究者や大企業に入るだけじゃない選択肢が見えたというか。
出会った方々の中には、例えば個人事業主の方も沢山おられて、こういう生き方もあるんだ、って。
―たしかに、視野が広がりそうですね。
卒業の時には就職をする予定でいたのですが、
東日本大震災があったり、今後の自分はどう働いていくのかって考えたときにフリーランスというか、自分で仕事を作っていく生き方を考えるようになりました。
―それでフリーランスに。
その時は、特にお野菜のことは考えていなかったんですが、もう少し当時のコミュニティの中でできることを探そうと思い、12月のギリギリでしたが内定を辞退させていただいたんです。フリーランスになったというよりは、就職先に行かなかったという感じでしょうか。
―すごい決断力ですね。
本当に直前まで迷いましたけどね。企業に入ってからフリーランスになる選択肢もあるけど、まずは自分で何かやってみて頑張って、もしダメだったら就職するという方法もあるなと思いそのような選択をしました。若いうちに挑戦した方がリスクも少ないし、なんとかなりそうな気がしたんです。
―なるほど、すごい。
そこから、色々試してみたんですか?
音楽事務所のお仕事もやりながら、他にもアルバイトをしながら、自分にヒットすることを探してみました。
ーちょっとずつ自分に合うのはどれかなという感じ。
そうですね。
―最初にお野菜に関わるきっかけはなんだったんですか?
最初は東日本大震災の後に、福島を訪れて農家さんに出会ったのがきっかけです。
そこでは、農家の方々が地域の人と交流しながら楽しそうにお野菜を販売されていました。
風評被害でお野菜が売れなくなっていたんですが、前向きに頑張ってらっしゃる農家さんの姿を見て、現地に来られない方々にも知ってもらえたらと思いSNSで情報発信をはじめたのがきっかけです。
―そこから、京都に戻ってからもお野菜に携わるようになったんですね。
はい、自然と地元である京都の野菜にも目がいくようになって、農家さんを紹介していただいて少しずつお手伝いさせていただくようになりました。
毎週日曜日、
大徳寺の近くの町家でお店を構えてらっしゃいます。
大原&上賀茂の農家さんのお野菜が中心。
朝に仕入れた彩り鮮やかなお野菜が揃います。
正午〜午後6時ごろまで/毎週 日曜日営業
〒603-8175 京都府京都市北区紫野下鳥田町23-1
※北大路堀川の交差点を北へ信号1つ分上がり、西へ入ってすぐ。