第2回

振り売りという文化

 

 

―最初にお野菜ってなったんですか、それとも先に振り売りってなったんですか。

 

先に興味を持ったのは野菜と農家さんですね。
『すぐき』という上賀茂の農家さんに伝わる独特のお漬物の文化があって、それがすごく面白くてお手伝いに行かせていただいてました。
今も漬けの作業の一部である皮剥きなどのお手伝いをさせていただいてます。

 

ー『すぐき』ですか。

 

『すぐき』というのは、漬物屋さんではなく上賀茂の農家さんたちが自分たちで漬ける少し特殊なお漬物です。
すぐき漬けにするためだけのすぐき菜というカブがあるんですが、それ自体が基本は上賀茂の農家さんしか種を持ってなくて。
さらに、漬け方も代々繋いでいっているものだから農家の家々で味が違っていて。

 

 

 

―面白い文化ですね。知らなかったです。

 

作り方もちょっと変わっていて、お酒造りみたいに室(むろ)と呼ばれるあたたかい部屋にいれて、最後に乳酸発酵を促進して作ります。

 

ー発酵するんですね。

 

はい。独特の酸味が出てとっても美味しいです。そういうお手伝いに行ってることを、たまたま Facebook や Twitter であげていたら、周りの人たちからどこで買えるのって言われはじめて。
注文を代わりに受けて、農家さんに発送してもらって何%か頂いて、というのを試しにやってみたんです。
それがすごい反応が良くて、京都の農家さんとも仲良くなるきっかけになりました。

 

ーなるほど。その後もお手伝いに行かれたり?

 

そうですね、夏野菜のお手伝い行ったり、農家さんとイベントを一緒にやったり。
その頃、マルシェが流行っていて、マルシェを主催する方から、農家さんを呼びたいけどつながりがないからと、何か出来ないですかって私に相談していただくことも徐々に増えていきました。
それで気づいたらお野菜のことをたくさんやるようになっていたという感じですね。
そんな中で、お手伝いさせていただいていた農家さんが振り売りをされていて、「かおりんも振り売りに行ってみたら」と言われて、試しに行ってみよって。

 

 

―本格的に振り売りでお仕事をしていくって思ったきっかけはありますか。

 

きっかけというよりも、じわじわです。
振り売りっていう農家さんならではの売り方で販売してみるのが面白そうだと思ったので、一度体験してみようってやりはじめたら、それが合っていたのだと思います。
SNSが広まり出したタイミングもあったかもしれません。
それまで音楽で関わってきた方や音楽のお客さんだった方たちと、野菜を通してまた違う角度でつながり声をかけてもらうようになったり。
徐々に販売に行ける場所が増えていって、週一回行ってたのをもう一回増やしたり、たまたま大きなレストランと一緒に何かやったりして、自然と増えていったという感じですね。

 

―もう周りもお野菜のことなら角谷さん、みたいな感じ。

 

そうですね、そう言っていただく機会が増えていって、気付いたらやめれなくなってたって感じ(笑)

 

▲12月に撮影したため根菜が多めの店頭

 

この辺は振り売りから買ってる方が多かったと思うんですよね。

 

ーはい!たまに見かけます。

 

振り売りは、上賀茂と山科が今でも残ってて有名なんですけど、上賀茂の農家さんは特に西陣織の人たちに販売するのがメインだったみたいです。
西陣織の方々は家で商売をしておられて、お母さんも手伝っておられたりするのですごい忙しかったのだと思います。

 

ーあ、なるほど。

 

お豆腐屋さんも魚屋さんも売りに来て、野菜は農家さんの振り売りから、っていう生活だったそうです。
農家さんたちもその方々の冷蔵庫代わりに週2,3回、そのお宅に行って野菜を売ってたんですね。
だから、上賀茂の農家さんって一つのお野菜だけを育てることが少ないんだと思います。色んなものを作って持っていくと、一軒で八百屋みたいになれるから、色んなものを買ってもらえるじゃないですか。

 

ーそっか、そうですね。

 

舌の肥えたお客さんだと、美味しい時は美味しいって言ってくれるし、逆に去年のトマトの方が美味しかったって言われることもあるんですね。
そういう信頼関係の中でダイレクトに意見を聞いて、農家さんはそれで聞くとやっぱり美味しく作りたいと思うし、美味しく作ったほうがいっぱい売れるから、やっぱり腕を磨くようになる。
それが京野菜、特に上賀茂のお野菜が美味しいって言われるのは、そういう文化があったからなんだなと思います。

 

ーそういう背景があったんですね。おもしろい。

 

実は、西陣は振り売りと密接な関係があって、ここにずっと住んでる人は今よりももっと見かけたんじゃないかな。

 

ー実際に買われてた方からのお話も聞いてみたいですね。
近所の方にお話伺ってみます!

 

 


 

 

 

毎週日曜日、

大徳寺の近くの町家でお店を構えてらっしゃいます。

大原&上賀茂の農家さんのお野菜が中心。

朝に仕入れた彩り鮮やかなお野菜が揃います。

 

正午〜午後6時ごろまで/毎週 日曜日営業

〒603-8175 京都府京都市北区紫野下鳥田町23-1
※北大路堀川の交差点を北へ信号1つ分上がり、西へ入ってすぐ。