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西陣にまつわる人々が、毎日綴るリレーコラムCOLUMN

2022.10.19
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昨年の11月に堀川商店街のそばにできた堀川新文化ビルジング。大垣書店やカフェなどが入っており、イベントスペースも併設している。文字通り、商店街に新しい文化を根付かせる核となるような施設だ。私も大学からの帰り道によく立ち寄るのだが、一つ気になっているものがある。
それはこの建物の入り口。道路と店内の間には二つ自動ドアがあるのだが、その二つが微妙にズレているのだ。点字ブロックもそれに合わせてカクカクと曲がっている。真っ直ぐ並べても特に問題はなさそうなのに、なぜか曲げられている。
これを見て、私は「参道みたいだな」と思った。社寺の参道は、しばしば途中で曲がり角が設けられている。直線にできる場所でも、あえて曲がらないと社殿に到達できないようになっている。建築家の槇文彦は、この折れ曲がりを神域の「奥」性を演出する空間装置と捉えた。
新文化ビルジングの入り口も、同じ意味合いを持っているのではないか。この建物は横に長く、奥行はとても短い。その「浅さ」を補うかのように、屈曲が設けられている。普段参道のことを考えすぎているせいかもしれないが、私はこの屈曲に「奥」を感じた。いつか、答え合わせをしてみたい。

重永瞬

京都大学文学部地理学専修重永瞬

地図とまち歩きが好きな大学生。“西陣の端っこ”(お隣?)仁和学区で生まれ育つ。大学で地理学を学ぶかたわら、まち歩き団体「まいまい京都」でスタッフとガイドを務める。なんでもない街角の記憶を掘り起こしたい。古本とラーメンが好き。