第3回

手機を学ぶ

 

これまで顔合わせ、展覧会見学と2度の取材をさせていただきました。

次に私たちが呼ばれたのは京都市立乾隆小学校。「なぜ小学校?」と思いながら現場に向かい校舎の中にお邪魔すると、そこには立派な織機が……!乾隆小学校では15年ほど前からとある取り組みをしているそうで、校舎の一角には織機をはじめ、西陣織に必要な道具が揃っています。

今回は、乾隆小学校の織機を使用させてもらい、嵯峨美の学生さんが手機を学ぶそうです。

 

 

◆乾隆小学校での取り組み

15年ほど前、桂さんの元に当時の乾隆小学校の校長先生から連絡がありました。

「子供たちが織った幡を卒業式に飾りたい。」

その一言から、今現在も続く冬の恒例行事となっています。

桂さんをはじめとした西陣の方々が協力して、小学校へ織機を運び、組み立て、そして毎年子供たちに織り方を教えながら続けてきたそうです。西陣ならではの地域文化を次世代に伝える取り組みですね。もちろん、今年の6年生も卒業式に飾る幡を作ります。今回は嵯峨美の学生さんが乾隆小学校の取り組みに参加される様子をお届けします。

 

 

この日、私たち以外にも見学にいらしている方々がいらっしゃいました。
西陣まいづるの舞鶴さんと職人さんのお二人。実は乾隆小学校に置いてある織機は、元々西陣まいづるさんにあったもの。織機のメンテナンスと今年の取り組みの様子を見にこられたようです。現在の西陣織業界でも手機で織ってらっしゃるところは少なく、手機から機械の動力で動かす力織機に入れ替える時には、手機は分解され捨てられるのだそう。大きいので保存なんてできないんですね。その中でも、珍しく分解された状態で保存していた乾隆小学校の織機は、小学生が操作できるサイズに調整し組み立て直したそうです。

 

懐かしそうに織機を見上げる西陣まいづるのお二人。
昔に比べて衰退している西陣織ですが、長年織物に携わってきた方々にしかわからない産業や文化への思いがあるのでしょう。「稼げないからといって簡単に辞められるものではない。引き継いでいかないと。」という言葉がとても印象に残っています。

 

 

何十年もこの織機を見てきた職人さんが丁寧にメンテナンスをしていらっしゃいます。
その横では学生さんが桂さんにレクチャーを受けながら織りの練習。足元の踏み板でたて糸を開口し、よこ糸を通して、筬(おさ)で整える。一連の動作をゆっくりと覚えていきます。ちなみにここで出てくる筬(おさ)とは「オサノート」の由来になった道具のこと。(詳しくはこちら

 

 

「最初はスムーズに糸を動かすのが難しいけど、慣れてくるとたのしい!」
「自分たちで作った図案が少しずつ織り上がってくるのが嬉しい」
などの声。
機械には機械の、手機には手機の良さがあるようです。時には失敗を繰り返しながら作品を作り上げるのも面白いかもしれません。

 

学生さんの中には3回生で就職活動中の方もいらっしゃいます。このままものづくりの世界にいくか、全く別の世界にいくか悩んでいるとのこと。今回のような経験から未来の道が見えてくるといいですね。

 

 

次回は学生さんが乾隆小学校の生徒さん達に織り方を教えながら卒業式の幡を仕上げていく様子をお届けします!
これからもお楽しみに!

 

 


 

京都プロジェクトとは……

 

嵯峨美術大学の選択授業の一つで、あるテーマを元に実際のフィールドで調査見学をし、
自ら企画し作品の制作と発表を行うまでのプロジェクト。
今回は「金襴」を用いた新たなデザインの織物を提案・制作し、
3月にみやこめっせで開催される西陣織工業組合主催の西陣織大会で展示する予定です。
染織・テキスタイル領域を中心に、観光デザイン領域など複数の領域の学生が集まり、
地域連携プロジェクトとしての視点でも活動をしていきます。

西陣側からは西陣織工業組合の桂さんが協力をして、3月までの間に学生さんと作品をつくられます。
工場の見学から手機の織り方まで指導をなさるそうです。

 

(取材協力)

 

西陣まいづる

西陣織工業組合

嵯峨美術大学


 

取材に協力いただいている桂さんが新しく職人さんを募集されているそうです。
興味のある方は是非!
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