第4回
消えそうな光を抱えて歩き続ける人へ
安達茉莉子 著
7月から続いた古本市ラッシュも、現在出店中の市でひと段落。気づけば5か月、無心で駆け抜けました。大先輩から何年も一緒に切磋琢磨している同年代の同業者まで、何日間も一緒に時間を過ごし、お互いの棚から刺激を受け、お客さんの反応もダイレクトに受け取れる古書即売会は、普段の自分の店とはまた違う大切な機会。実はわたしも毎回、こっそり小さなチャレンジを忍び込ませています。成功するときもあれば失敗するときもあるけれど、失敗のリカバリー含めこの5か月もたくさんの学びがあり、またひとつ、成長させてもらったように思います。
自分の店を持っていると、自分では予想もしていなかった期待をかけてもらうこともあり、店をしている年月が長くなれば長くなるほど、店の名前を知ってもらえば知ってもらうほど、いい意味でも悪い意味でもその頻度も多くなるような気がします。その結果、とても気に入ってもらえることもあれば、それまでの関係が一瞬でなくなってしまうこともある。小さな店はその在り方も目指すところも移ろいやすいものだから、どちらも悪くなくても関係を保っていることが難しくなってしまうことがときどきある。
店を続けるうえで大事なことは、そんな何もかもをひっくるめて受け止められるだけの覚悟と、めげなさ、あとはしあわせで適度な諦め、のような気がします。あまりに消極的すぎてまたがっかりさせてしまうかもしれないけれど。
他の業種は分かりませんが、うれしいことがあっても、はたまた悲しいことがあっても、平熱で続けられるのが古本屋の好きなところ。お客さんの立場に立ってみても、平熱の京都を垣間見れることも、やっぱり古本屋の魅力じゃないでしょうか。人々の蔵書で成り立つ古本屋には、その街で暮らす人たちの、平熱の日常があるんじゃないかと思います。そう思うと、古くて暗い、店に入るのにちょっと緊張する古本屋が、ただただ難しそうな本が並んでいるだけではない、なんだか愛おしい日々と足跡の集合に見えてきませんか?
今回紹介するのは、安達茉莉子さんの『消えそうな光を抱えて歩き続ける人へ』(ビーナイス)。イラストと文章を手掛ける安達茉莉子さんの作品は、弱くて、だけど強さをまとって日々を生きるわたしたちの心にそっと寄り添ってくれる。たとえ消えそうでも、小さな光があるからわたしは今日も歩いていける。だけどその小さな光が消えてしまったあとでさえ、その暗闇でしか見えない小さな小さな、そして大切な光があるということ。安達さんの言葉を読んで、改めて大きな希望だと思いました。
毎日必死で生きている私たちには、ゆっくり傷ついていられる時間がない。お客さんの前に出るからには、せめて平熱の温かさで迎えたい。何かに傷ついて、だけどゆっくり自分の足で回復していこうという私たちのそばで、温かく抱きしめ、ほんの少し背中を押してくれるような一冊です。
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