第3回
挑発する少女小説
斎藤美奈子 著
先日、ウェブショップでお買い物をしてくれたお客様からうれしいハガキが届きました。ハガキは全部で四枚、時間差で届きました。宛名面には四枚に分かれて書かれたメッセージ、表にはそれぞれ、わたしも大好きなグレタ・ガーウィグが若草物語を映画化した『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』の主人公四姉妹の写真。以前、わたしがブログに書いた映画の感想を読んで、ちょうどDVDで同じ映画を観てハガキを下さったそうでとてもうれしくなったのでした。この場を借りて、本当にありがとうございます。
長年多くの読者に愛される少女小説のひとつである若草物語に生き生きとした現代的な解釈を吹き込み、またさらに多くのファンを生み出したであろうストーリー・オブ・マイライフ。わたしも映画を観る前に若草物語を再読し、改めてこんなにも今のわたしたちにも合致する物語だったんだと感動した覚えがあります(独立独歩のジョーはもちろん、四女のエイミーが最高の新境地!)。
いただいたハガキを読んで、わたしどんなブログを書いてたのかな、と約一年前のブログを読み返してみたら、最後、「ああ思い出しても胸がいっぱい。映画を見た方とぜひお話したいです。」と締めていました。きっとハガキをくれた方も映画を観て同じ気持ちになったんだろうなと思うとまたうれしい。わたしが現役で(?)少女小説を読んでいたころは、読んだ本について語り合う仲間というのはいなくて、いつもひとり胸をいっぱいにしていました。今思えばそれもなんてきらきらと大切な体験だったんだろうと思うけれど、読後はいつもぼーっとしているのに頭はさえていて、何日も違う世界にいるようでした。だけど、少なくない本好きの心の基盤となっているような部分にもしかしたら同じ物語があるかもしれないと思うと、それはなんだかすごいことですね(少女小説に限らず、十五少年漂流記やドリトル先生シリーズや、少し違うけれどファーブル昆虫記なんかも大好きでした)。
今回紹介するのは、そんな少女小説を大人になってから読んでみようという『挑発する少女小説』(斎藤美奈子)。本署で取り上げられているのは、『小公女』、『若草物語』、『ハイジ』、『赤毛のアン』、『あしながおじさん』、『秘密の花園』、『大草原の小さな家』、『ふたりのロッテ』、『長くつ下のピッピ』と少女小説の名作ぞろい。もしかしたらわたしと同年代くらいの方は、アニメで親しんでいたという方も多いかもしれません。著者のキレのある解説で振り返る少女小説、描かれた時代背景、女性の置かれていた状況、主人公の成育環境。胸高鳴らせ読んでいた物語には、今も色褪せずに私たちをエンパワメントしてくれる力強いメッセージが幾重にも込められています。
本を読むことに付随する好きな体験のひとつに、自分でも忘れてしまったくらい過去の自分と再会できる、または発見できる、いうことがあります。この本を読んで、わたしは幼かったあの頃、単に物語世界や異国の美しさに感動していただけじゃなかったんだ、と腑に落ちるようでした。田舎の一軒家の子ども部屋で夢見ていた外の世界と自分がこれから進む道。大人になったわたしは、そんなまだ何者でもなかった弱くて強い少女時代の自分と再会し、そっと抱きしめてあげたいなと思うのです。
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