2022.09.24
Written By黒田健太
![](https://osanote.com/sitemanage/wp-content/uploads/2022/09/FD58D340-A902-4CE8-986E-D1980AF2E7AC-1024x1024.jpeg)
夕暮れが近づく交差点で信号待ち。視線を感じた。
思ったより大きな(10等身ほどの)彼女はじっと南を眼差し、その眼下をさまざまな速度で人が行き交う。
古来より私たちは自然をさまざまなものに見立て、見出し、この世ならざるものの気配を感じ取ってきた。
雲から現れる大入道、月面に浮き上がる貴婦人、コンセントに住む小人の顔。:)
普段は背景と溶け合っている彼らと目があった時、私たちはあらゆる気配が息づく中で生活していることを気付かされる。
そしてほとんどの場合、出会った翌日には彼らの存在は薄れているはずだ。だから今、記憶から粛々とこぼれ落ちていく彼女を書き留めておきたい。
堀川今出川に座する長身の彼女に巨人の威風はなく、その目には憂いを宿していたように思う。いつか来る誰かを待っているのか、もう去ってしまったのか。あるいはゆっくりと変わりゆく街並みに思いを馳せていたのかもしれない。
いずれにせよ、私たちの時間の尺度ではそれを知り得ることは叶わない。
両者の間にある「分かり合えなさ」は、いつまでも青にならない横断歩道のようにこれからも隔たれたままだろうか。
束の間、留まっていた時間が進むのを感じる。信号が変わった。
ペダルを漕ぐ足が再び動き出す。