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西陣にまつわる人々が、毎日綴るリレーコラムCOLUMN

2021.06.22
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建築のような大きな工作物から時計などの細かなものづくりの現場には、それぞれの仕事ごとに身につく“寸法感覚”があり、それを《基準精度》と言います。手作りの和眼鏡であれば精度は1/1000ミリに迫ります。一般的な汎用工作機械がおよそ2/100ミリですから、手作りの精度は一桁高いところにあります。ところが一生懸命作っても「まるで機械で作ったみたいだ」などと評されるのですから可笑しなものです。

さて、この精度は眼鏡の耐久性に深く関わります。精度が高いほど歪みの発生も小さく抑えられるので寿命も長いものです。私の工房にメンテナンスで里帰りするものは、十数年経過したものも多く、今後もさらに10年20年と使われ続けるものになるでしょう。

ところで“精度”は作り手にとっては何を意味するのでしょうか。自分にとって“精度”へのこだわりは、作り手が表現したいものを人(※自分も含める)に正しく伝えるためにあると考えています。作り手がいかに感性が高く美しいものをイメージ出来ても、それを正しく制作できなくては人には伝わりません。その表現へのこだわりこそが“精度”へのあり方なのだと。自分が美しいと感じる線に1/1000ミリにまで迫りたい。それはとりもなおさず自分を信じ、自分を大切にする取り組みなのです。

山ノ瀬亮胤

眼鏡制作者・現代美術家・ソシエテヌーベルリュネト視覚研究所々長山ノ瀬亮胤

京都市上京区在住。眼鏡制作者・現代美術家・ソシエテヌーベルリュネト視覚研究所々長。芸術~工芸に拡がる独自分野の構築で国内外より評価され欧州ハプスブルグ家御用達。マスメディアでの出演・取材多数。豊かな江戸庶民文化と職人の心を紹介している。