2021.06.09
Written By黒田健太

おばけこわいオーケストラ
僕は自分の目の届かない場所に対して少しこわいと思ってしまいます。
ちょうど二年前に引っ越してきて千本今出川の二階建ての一軒家で暮らし始めたとき。1階にいたら2階が、2階にいたら1階が、見えない。その見えない恐怖を中和するために夜は音楽を聴いていました。
ある夜、音楽を聴いているとスピーカーの電池が切れて、すぅっと静寂がやってきて何かの音を耳にしました。
こつんっこつんっ
(?)
コツンっコツンっ
(….やだ、なんか音がする。勘弁してくれ。。。)
どうやらそれは窓際の方から聞こえていて、ジリジリと窓に近づくと「おぉぉー!」と声が。
その正体は隣のビリヤード場から聞こえてきた声と音たちで、それ以来、窓を開けて生活することが多くなりました。
今夜も窓を開けるといろんな音が聞こえてきます。
遠くで車が走っていき、近くでおじいちゃんが話していて、さらに近くで誰か料理をしていて。
そうやって姿の見えない演奏家たちの姿を音越しに眺め、ささやかな演奏会に耳を傾けます。