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西陣にまつわる人々が、毎日綴るリレーコラムCOLUMN

2021.06.05
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始まりは、卓上にある美味しいキャベツ。
お寺に集う皆で、おいしい。おいしいと言いながら、寄ってたかってちぎっては、もしゃもしゃと食べていました。
そのキャベツがまた、生のままで味付けも不要なくらい甘くて美味しさたっぷりで、食べてるだけでもう皆自然と顔がほころんでいて。
2年前の平成から令和に変わる夜のことでした。
そのキャベツを持ってこられたのは、当時兼業で農家をされていた今井啓文さん。野菜を食べている皆の沢山の笑顔を見て、「私の生きる道はこれだ!」と心が決まったそう。その数ヶ月後にはなんと、20年勤めた会社を退職。地元の滋賀県・守山市で無農薬栽培農家「ラトナファーム」をスタートさせたのです。
始めたばかりは苦労の連続。度重なる天候不順や、農薬を使った野菜との価格競争に巻き込まれたり。それでも愚直に、真摯に作り続ける今井さんのために私たちも何か応援できないかと昨年秋から寳幢寺の軒先での野菜市を始めました。皆でわいわいと店番しながら、半年経った今はすっかり、地域にも定着しつつあります。ご家族やお友達を連れてきてくださるご近所さんも増えてきて、あの日の笑顔がより一層広がってゆく風景を見つめています。

松波さゆり

和裁士松波さゆり

岡山県出身。布好きが高じて京都で学び暮らし始めて早18年目。プロの和裁士としてテレビドラマの衣装をはじめ様々な仕立てを手掛ける。現在は市民運営の寺院 ”寳幢寺”のスタッフとして日々を過ごしながら、社会や地域に貢献できることを模索しています。