2021.12.13
Written By重永瞬
あなたは「ビルトイン地蔵尊」を知っているか?
文字通り、建物にビルトイン(組み込み/埋め込み)されたお地蔵さんのことである。路上観察における一種のカテゴリ、観察対象と思ってもらえればよい。ツイッターで「#ビルトイン地蔵尊選手権」と検索していただければ、雰囲気が分かるだろう。名づけ親であるmakes no sense氏(@onmusiconlife)のほか、何人もの人が写真を上げている。
「地蔵尊」とあるが、祠であれば何でもよいらしい。また、「選手権」とあるが別に1位を決めるわけでもない。ネーミングは語呂の問題である。地蔵といういかにも伝統的な存在が、近代的なビルに埋め込まれる。そのギャップがなんとも魅力的だ。makes no sense氏はこれを「収納される信仰心」と形容しているが、その表現もまた素晴らしい。
お地蔵さんの多い京都には、当然ビルトイン地蔵尊もたくさん存在する。西陣を散策しているとときどき遭遇するので、私はそのたびに写真を撮っている。しっかりとお地蔵さんの居場所が確保されているところに優しさを感じ、嬉しくなる。
お地蔵さんとは、非合理の象徴であると思う。直接的には経済的価値を生むわけではないお地蔵さんのような存在は、世の中にいくつもある。我々が生きる「社会」という建物は「お地蔵さん」をビルトインできているだろうか。
京都大学文学部地理学専修重永瞬
地図とまち歩きが好きな大学生。“西陣の端っこ”(お隣?)仁和学区で生まれ育つ。大学で地理学を学ぶかたわら、まち歩き団体「まいまい京都」でスタッフとガイドを務める。なんでもない街角の記憶を掘り起こしたい。古本とラーメンが好き。