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西陣にまつわる人々が、毎日綴るリレーコラムCOLUMN

2021.08.15
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船岡山。西陣の北方にある小高いこの山は、平坦な京都盆地にあって珍しいランドマークとして親しまれている。学校の遠足で登ったという人も多いだろう。山の北側は公園になっており、広場のほかに野外ステージも設けられている。
この公園の一角には、何やら荘厳な雰囲気のモニュメントが建っている。これは昭和10年に建造された「ラジオ塔」である。昭和初期以降、ラジオ放送の普及のため全国各地にこのような塔が建てられた。京都では、円山公園をはじめ8ヶ所に現存する。
昭和初期には、現在では夏休みの風物詩となったラジオ体操も「国民保健体操」という名前で開始された。全国の国民が同じ時間に同じ音を聞き、同じ動きをする。これまでにないこの経験は、人々が国民国家としての日本を強く意識する契機になったことだろう。
ところで私が気になったのは、このラジオ塔の向きだ。広場からラジオ塔を見ると、どうもその延長線上に、御所があるように思えた。しかし、地図に線を引いて確かめてみると、京都御苑をかすりはするものの、京都御所からはズレている。京都ならありそうな話だと思ったのだが、残念ながらその読みは外れだったようだ。まあ、そういうこともある。

重永瞬

京都大学文学部地理学専修重永瞬

地図とまち歩きが好きな大学生。“西陣の端っこ”(お隣?)仁和学区で生まれ育つ。大学で地理学を学ぶかたわら、まち歩き団体「まいまい京都」でスタッフとガイドを務める。なんでもない街角の記憶を掘り起こしたい。古本とラーメンが好き。