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西陣にまつわる人々が、毎日綴るリレーコラムCOLUMN

2021.07.21
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祇園祭りの季節には必ずすることがある。伯牙山の粽に山田松の線香を添え、東京のある年配の女性に送ることだ。しかしコロナ禍は京都伝統の祭事にも影を落とし今年も山鉾巡行が無い。ただ昨年販売も無かった粽は今年は手にすることが出来た。

平成29年春、突然の訃報に私は言葉を失った。日本橋で眼鏡舗を営む友人の早逝。翌年「現当主が逝去して事業の承継が困難となり、それとともに永年培ってきた技術の継承ができなくなりました」と案内が届く。400年の暖簾に幕。我が家とも付き合いが深く、14代当主は私の面倒を見、15代目はまるで私を兄のように慕ってくれた。まさに襷掛けの継承である。

日本にこの二人だけでもいれば本物が遺せると思った。あとは私がその日本一敷居が高い店に相応しい眼鏡を作るだけだ。そうして仕事を極めに京都に来た。彼もまた私が作った眼鏡を先代に見せられて、修行先のドイツに居ながらでも、古びた店を継ぐ勇気を持てたそうだ。

*伯牙山は中国春秋時代に、古琴の名手伯牙とその良き理解者である鐘子期の物語に由来する山だ。唯一無二の自分の音を知る友、鐘子期の死を知り、自ら弦を切って伯牙はその後二度と琴を弾くことは無かったと云う。

山ノ瀬亮胤

眼鏡制作者・現代美術家・ソシエテヌーベルリュネト視覚研究所々長山ノ瀬亮胤

京都市上京区在住。眼鏡制作者・現代美術家・ソシエテヌーベルリュネト視覚研究所々長。芸術~工芸に拡がる独自分野の構築で国内外より評価され欧州ハプスブルグ家御用達。マスメディアでの出演・取材多数。豊かな江戸庶民文化と職人の心を紹介している。