箔と言われて何を思い浮かべますか？

そう問われて、多くの人がそうであるように、僕の頭には「金箔」が浮かび上がってきた。金閣寺に張り巡らさている金箔。金沢のソフトクリームに巻かれている金箔。金箔こそが、僕の認知の範囲内にある「箔」なのである。

ある日、ひょんなことから堀川新文化ビルヂングの大垣書店を訪れた。ちなみに、入り口付近に並ぶ色とりどりの『デザインのひきだし46』は箔押し特集であるらしい。様々な色の紙に2種類の箔が押され、合わせて3種類の色からなる表紙が作られている。僕は数学に明るくないので検証はできないが、聞くところによると、この色たちの組み合わせは千通りにも及ぶらしい。
2階のイベントスペースに上がれば、この千通りにも及ぶ表紙が壁一面に、そして天井から吊るされる形で展示され、なかなか圧巻な眺望である。ひとつひとつの表紙には丁寧な箔押しがなされ、生き物や食べ物、釘や工具、いま話題のぴえんまで描かれている。

箔の色は無数にあり、メタリックなものや、角度によって模様の変わるホログラムと呼ばれるものまである。そして版画のように型を作り、その型を用いて箔が押される。こうして押された箔は僕たちの日常にありふれており、書籍の想定や家電製品、スーパーに売っているような日用品のパッケージにも使われている。という箔についての説明もあった。
そうこうしているうちに、僕はワークショップに参加することになり、参加費と引き換えに1冊のノートと3色の箔を手に入れる。この箔のうち、ひとつは金色か銀色のものであり、これはカーボン紙のように、なぞった部分に金色あるいは銀色の模様が現れる。ピラピラしている箔をなぞっているだけで、なぞった通りに明瞭な黄金の線が現れているので、つい楽しくなってしまって線の数を増やしてしまう。

残りの2色は、転写ではなく両面テープで接着するタイプの箔だ。自分好みの大きさと形に両面テープを切り取り、ノートに貼り付ける。そこに箔を乗せ、接着を確認したのちに引き剥がすと、例えば赤の箔ならば赤い模様が、青い箔ならば青い模様が現れる。これはなかなか難しく、箔の張り付きにムラがあったり、端の方はうまく接着しなかったりするけれども、それはそれでひとつのアジだと考えると愛おしく思えたりもする。この2種類の箔を駆使しながら、自分だけの、オリジナルのノートを作りあげる、何とも愉快なワークショップだ。

今回のこの愉快なワークショップを実施しているのは、『デザインのひきだし46』の付録としても手に入れることができる箔転写キット「煌葉-kiraha-」を作られた関西巻取箔工業株式会社、通称KANMAKIさんだ。京都の大原での創業から70年、西陣織の金糸をルーツに持つ顔料箔を作っているという。そう、西陣織の金糸がルーツにあるのだ。西陣で活動するosanoteが、西陣にルーツのある会社と西陣で偶然出会うとは驚きだ。これは出会うべくして出会ったのだと言っても過言ではなく、こうして生まれたご縁と、箔が押されたオリジナルのノートはこれから大切にしてゆくだろう。