2021.04.23
Written By山ノ瀬亮胤
堀川の工房前にある一本の銀杏。春は鮮やかな新緑に、秋には黄金色に彩られ工房の中を照らします。この木は四季徒然に私を見守ってます。西陣東側を縦貫する堀川通は美しい銀杏並木が好ましい景観を作っています。
かつて私は、江戸金枠を継いではいるものの家業の未来は描きづらく、最後に心意気だけでも遺せればと思っていました。
あの日東日本大震災が東北を襲い、大きく自分を突き動かすきっかけとなりました。志を携えていても人生は仕事を成すには短かすぎます。そこで新たな制作への刺激を求めて東京から京都に工房を移転しました。
工房で身につくことは技術の初歩にすぎません。いつでもこれからが本当の修業の始まりです。その見方では私も修業中の身。いまは愛弟子と共に学ぶ日々を送っています。願わくばこの子の修業人生が順調でありその末に「良かった」と思えるようであって欲しいものです。
京都のものづくりはミクロの世界に分け入るような印象(個人的な感想です)。それだけに囚われてしまったら迷宮に入りにかねません。外界に発出する仕事であることを強く意識していこうと思います。
これから西陣に暮すこと、作ること、継承のことなどを綴って行きたいと思います。拙い文章ですがどうぞよろしくお願いします。
眼鏡制作者・現代美術家・ソシエテヌーベルリュネト視覚研究所々長山ノ瀬亮胤
京都市上京区在住。眼鏡制作者・現代美術家・ソシエテヌーベルリュネト視覚研究所々長。芸術~工芸に拡がる独自分野の構築で国内外より評価され欧州ハプスブルグ家御用達。マスメディアでの出演・取材多数。豊かな江戸庶民文化と職人の心を紹介している。