2021.06.02
Written By景井雅樹

西陣で髪を切る。
僕がこのエリアに(正確にはその近所に)住み始めて14年が経とうとしている。
僕が毎日絵日記を描き始めたのは大体その前後くらいだろう。
過去のものを見返すと、定期的に登場してくる場所がある。その一つが散髪屋だ。
14年前、千本今出川より少し南、(いまだに慣れない京都風に言うと下ると言うのだろうか)英国風の外観とショーウィンドウを飾るアンティーク、そして「技術料」という値段表に何やらダンディズムを感じ、その散髪屋に入店したのだった。
オヤジさんが特注したというシャンプー台の前に座り、映画やらコーヒーやら古い自転車などについての話をしているうちに髪型は完成し、顔を剃ってもらい終了する。
僕と世代の近い息子さんとは趣味のギターの話をする。
その日から今にいたるまで僕はその散髪屋、バーバーハヤシに通い続けている。
いつも仕上げに柑橘系のトニックを髪に振りかけてもらうのだが、この香りを嗅ぐと、往年の西陣のダンディたちにその時だけは近づけた気がするのだ。