2021.04.27
Written By黒田健太
桜の小道にて
とようけのお豆腐屋さんで買い物をし七本松通りのなだらかな坂を自転車で帰っていた朝。
まだ朝も早かったのでぼーっとしながらペダルを漕いでいると、目の端に鮮やかな景色が映って思わずわっと声を出して自転車を停めました。
細い道に桜が咲いていて地面には落ちた花びらが線を作り道の奥へと続いていました。
道に入ると桜木の高さがだんだんと低くなりアーチを形作っていて雪のようにはらはらと花びらが散っていきます。
身体をかすめていく花びらはゆっくりと落ちていき、体感する時間が遅くなっていくようでした。
そのあまりにも突然居合わせてしまった小道は僕がそれまでいた七本松通りから遠く離れた場所に誘い込んでいるに思えて、あぁ美しいものは畏ろしいんだなと感じそっと引き返しました。
もといた七本松通りに戻るとすっかり目が覚めていて、通りにいる車や人を見ながら帰りました。
春はあらゆる命が芽吹き波打つことで力強く世界がうねる季節ではないでしょうか。
あの朝僕はそんな「春の渦」のようなものに踏み入れてしまったのだと思います。
紡ぎ手/綴り手黒田健太 オサノート
初めまして、 西陣に住んでいる黒田健太です。 夜のがらんとした千本通を歩くのが好きで、たまに夜中に出かけます。生活をしていると忘れてしまうのですが、そんなささやかな時間にときどき立ち寄りたいと思っています。