【そもそも、綜絖とは?】

 

織機の一部品。織機で経糸(たて糸)を引き上げ、織物の組織や紋様に合わせて緯糸(よこ糸)を通す杼口をつくる装置のこと。正確に紋紙の指令を伝達し、経糸を正確に引き上げるために必要となる。例えば、1本の帯に6,000本の経糸が必要なら、同じ数の綜絖が必要となる。

 

参考:富坂綜絖店HP、ブリタニカ国際百科事典小項目事典、きもの用語大全

画像:wikipediaより

 

 

綜絖業の昔と今

 

ー富坂さん以外にも、西陣で綜絖業をされている方はいらっしゃるんですか?

 

私の家は綜絖業を110年していて、私は3代目なんです。

一番多い時は90軒。私のおじいさんが明治に綜絖業を創業しました。

 

ー90軒!携わっている方も多かったんですね。

 

綜絖組合というのがあるのですが、今入ってるのは7〜8軒くらい。昔は組合で綜絖の研究などしたものです。西陣織は斜陽産業なので、みんな年を重ねて辞めていきますし、今も携わっている人は少ないですね。

 

ーなるほど、やはり減ってしまっているのですね……。富坂さんは綜絖組合に入られているんですか?

 

現在、私は入ってないんです。

だけど、西陣織工業組合とはつながりがあります。組合員ではないけど、西陣織工業組合から頼まれて西陣織を使った小物をふるさと納税の返礼品として作ったりしてます。

 

 

ー明治から続く創業110年の老舗とのことですが、昔から伝えられてきたことや、大切にしてきたことはありますか?

 

やっぱり西陣織を残していくことがまず大事。今は成人式くらいでしか着物を着ないでしょう。どうして着ないかと言ったら、行動範囲がものすごく狭くなる。この現代社会とはマッチしてない。そんなマイナスなイメージもあるけども、まずは織物の良さを知って欲しいという思いでこれまでやってきました。

 

 

 

西陣織の広がり

 

ー先ほどふるさと納税のお話にもあったように、綜絖業の他にもこういった和工芸の作品を作っていらっしゃいますが、そのきっかけや理由はなんですか?

 

最初のきっかけは西陣織のPRにしたいと思い、20年くらい前から作品を作りはじめたんです。元々ものづくりが好きだったこともあって私自身楽しくやってました。西陣織がだんだんと売れなくなってきて、西陣織に関わる者として少しでも知ってもらいたいとはじめたのが小物作りの一番最初です。

 

あと、私はアイディアを考えるのが好きで、これまで人がやっていないことをしたいと思いながらやってきました。他の人が作ったものを見て、これいいなと思っても真似したくないんです。その代わり真似もされたくない。なので、独自のものを作ってきたつもりです。

 

小物作りで最近創作したのはiPhoneケースなんです。iPhone4が出てきたときに、西陣織の生地でiPhoneケースを作るようになって、本格的に販売をするようになりました。それから、新しい機種が出るたびに作ってます。実はiPhoneケースを販売しはじめたときに、すぐにテレビの「マツコの知らない世界」で紹介していただいたんです。そのときには注文も問い合わせもパンクするほどにあって……。私が作るまでは西陣織のiPhoneケースってなかったんですよ。そんな風に他所にはないものを作りたい、と思ってます。

 

 

 

 

富坂さんの考える、西陣織の今後

 

ー西陣織の今後の展開はどのようになっていくと考えていらっしゃいますか。

 

既に斜陽産業になっているし、難しいところですね。お祭りで浴衣を着ることはあるけど、普通の生活では着ないでしょう。着物も同じ。いつか伝統衣装になっていくんじゃないかな。

 

ー文化になっていくということですか?

 

そうですね。でも、なくなりはしない。今あるものがいつかはなくなっていくかもしれないし、作る人も減ってくかもしれないですが、必ず違う人がまた立ち上げるんじゃないかな。

 

ー斜陽産業とおっしゃっていましたが、若者の着物離れや身近で西陣織がなくなっていくことについてどう思われますか?課題等何か考えていらっしゃることとか……。

 

若い人が興味を持たないことは仕方がないと思います。でも、少しでも多くの若い人に知ってもらうことが一番大事だとも思う。こうやってosanoteで取材をしてくれたり、新聞とかメディアに出たらもっと広がって興味を持つ人が増えると思います。

 

まずは西陣織というものがあることを知ってほしい。最近、和装が好きな方はよく着ていらっしゃる。最初は古い着物や帯からはじめて、肌で感じて、いいと思ったら新しい着物や西陣織の帯を購入されたらいいと思う。なにがスタートでもいいんです。少しの興味から知ってもらえたらいい。

 

斜陽産業というのは「斜陽」だから、なくなりはしないと思います。

ある程度落ちてしまうのは仕方がないことだけど、なくなりはしない。

 

 

 

富坂さんが伝えたいこと

 

ー今はSNSがあって自分のことを発信しやすいと思いますが、そういった環境の中で、富坂さんのように新しいことを見つけることもなかなか難しくなってくると思います。新しいことをやり続けるコツはありますか?

 

まず、自分が何に興味を持っているかを知ることじゃないかな。漠然と何をしようかなっていうのでは見つかりません。だから、まず世の中には何が必要なのか、自分は何をしたいかというのを突き詰めて考えていったら、絶対に見つかるはずです。

 

これはと思うものがあったら、ネットで調べたら絶対にどこかにある。でも、そこで諦めないで。既にあるものを受け入れて、自分のものにして広げていく。そうしたら、また違う方向に持っていけると私は信じているし、今までそうしてきました。やり方によっては違うこともあるかもしれないけど、漠然と考えても前に進めません。まずは、自分のやりたいこと、何を目標としているかを見つけるというのが一番だと思います

 

ーそれでは、若い世代に伝えたいことはありますか?

 

若い時はなんでも経験しておくと絶対に自分の宝になりますよ。色々試す中でいらないものは放して、経験として残したらいい。良いことは吸収して自分のものにする。もちろん、それが仕事になることもあるし、そうじゃないこともあるだろうし、とにかくいろんなことを経験してほしいです。