2021.09.01
Written By川原さえこ
智恵光院通を北から南に歩く。
早朝の京都は静かだ。
家の玄関前を履く人がちらりほらりいる。
以前、東京で古本屋の店番をしていたときに、オーナーが「門前の掃除は商売の基本」と言っていた。
それ以来、店番の際に店前を履く時は「門前の掃除は商売の基本」と唱えるようになった。
普段の通勤路で、必ず門前を朝履いていらっしゃる会社がある。そのほうきの角度や履く強さがとても素敵なので、私も自分の仕事先の清掃で玄関掃除をするときに、その角度と強さを念頭に置いてほうきをかける。相変わらず「門前の掃除は商売の基本」と唱えている。
京都の道沿いにはお地蔵様の姿が多くある。
智恵光院通の朝には、掃除とお供えのお手入れをする方の姿も。
生活の中に溶け込んだお地蔵様たち。
京都の通り歩きをしながら、お地蔵様の前を通るときに、お地蔵様の真言「オンカカカビサンマエイソワカ」と3回私は唱える。
早朝の京都の通りは静かだが、私以外にも、心の中で祈りを唱えている人があちこちにいるのかもしれない。
祈りと暮らしがそばにある道が好きだ。
もう一つの椅子川原さえこ
京都府長岡京市在住。フリーランスのリサーチャー、保育士。「もう一つの椅子」という名義でまちのランドスケープ(風景)研究を行う。東京下町から京都へ来て約1年。観光客でもなく京都の地元民でもない境界の視点でふらりと歩いたまちの景色を描く。