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西陣にまつわる人々が、毎日綴るリレーコラムCOLUMN

2026.03.16
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日差しがあたたかい。一条戻り橋の河津桜は、もう葉が目立ち始めている。

一条通りを東に歩き、お店が見えると、正面ではなくあえて駐車場側から敷地に入る。小道を抜けると、空間がふっと開き、美しい庭園とテラス席が現れた。

 

ここは虎屋茶寮 京都一条店。黒を基調としたインテリアに静かな店内。落ち着いている雰囲気の中で、店員さんたちはテキパキと動いている。テラス席に座りたいことを伝え案内してもらう。

「少し寒いので」とブランケットとお茶を持ってきてくれた。「注文がお決まりになりましたらお呼びください」と離れようとする店員さんを呼び止める。

 

今日は3月16日。この時期の注文は決まっている、よもぎ餅だ。

 

虎屋のよもぎ餅は、この時期だけ、一部の店舗でしか食べられない。

二年前、お汁粉目当てで訪れたとき、期間限定の文字を見つけ、注文しないわけにはいかなかった。それからは河津桜が咲き始めると、まだかまだかと待ちわびてしまう。

 

よもぎ餅が席に届くと、まずは一緒に注文した玉露に湯を注ぐ。

茶を蒸らしている間に、よもぎ餅をひとつ。ゆっくり焼かれているのだろう。餅がとろりとして、こし餡と口の中でやわらかく混ざり合う。添えられた桜湯をひと口含み、ゆっくりと深呼吸をする。

よもぎと桜の香りで口いっぱいに春を感じる。この瞬間がとても好きだ。

続けて玉露を飲み、濃厚な旨味に思わずしばらく言葉を失う。これがいつもの流れだ。

 

暖冬とはいえ京都の冬はとても冷える。

三月に入ると、少しのあたたかさとともに花粉が春の訪れを知らせる。

花粉症になってからは春が恨めしいものになっていたが、本来は全ての生物が動き出すような香りが好きだった。それを思い出させてくれるのが、虎屋のよもぎ餅だ。春のあいだに、もう一度食べに来ようと思う。

横山恵

探り手/運営横山恵 KéFU stay&lounge

KéFU stay&loungeカフェ宿泊事業統括マネージャー。「オサノートを通して西陣の街を訪ねてほしい」という思いでメディアを設立。普段は宿泊施設やカフェの現場に立っていたり京都を走り回っています。純喫茶とロックライブが好き。すてきな純喫茶情報お待ちしてます。